世界経済 中国
中国の公式発表「6.9%」成長は本当か? 「国家統計局」の苦しい弁明・全内幕
現実には「マイナス0.2%」という声も
王保安・中国国家統計局長 〔PHOTO〕gettyimages

いまとは比較にならないほど言論が自由だった胡錦濤時代のこと。秋の「国考」(国家公務員試験)の季節に、中国のインターネット上で、「中国国務院で最も就きたい職業は何か?」「最も就きたくない職業は何か?」という話題が盛り上がったことがあった。

中国国務院というのは、中国の中央官庁の総称だ。おそらく国務院に勤める少なからぬ官僚たちも、面白がって匿名で投票していたのではないか。

「就きたい職業」第1位は、国家民族事務委員会のチベット族担当者だった。理由は明示されていなかったが、それは「言わずもがな」というものだ。すなわち、多額の賄賂収入が期待できる部署だったのだろう。

一方、「就きたくない職業」第1位はと言えば、外交部スポークスマンと国家統計局長だった。こちらも理由は明示されていなかったが、容易に想像できた。すなわち、いつも公にウソをつかなければならないポストだからだ。

その国家統計局長が一年で一番注目されるのが、毎年1月中旬に行われる「前年のGDP成長」の発表日だ。数百人の中国内外の記者が詰めかけ、世界中のテレビカメラが中継する。

「初期の概算によれば、2015年のGDPは…」

1月19日午前、世界が注視するなか、王保安・中国国家統計局長の記者発表会が開かれた。

名前を逆さまから読めば、「安保王」。それだけで何だか国民に安心感を与えるような印象だが、本人はクソマジメな口調で、強硬な発言することで知られる。

1963年12月、河南省魯山生まれで、中南財経大学を卒業後、難関で知られる財政部に就職。財務官僚としてキャリアを積み、昨年4月に、財政部副部長(副大臣)から国家統計局長に天下った。そのため、今回が初の檜舞台だった。

思えば、前任の馬建堂局長は、「ミスター0.3%」というニックネームで、やはり海千山千の人物だった。不動産が3割、5割と異常高騰した2010年に、「われわれの統計によれば、年間0.3%しか上昇していない」と嘯いたことから、この名が付いたのだ。それでも馬建堂前局長は、長年の「統計テクニック」が高く評価されたようで、中国共産党中央委員会委員に抜擢された。

そんな「大口叩き」だった馬建堂局長に較べると、王保安局長は、いくらか地味で堅実なイメージを与えるが、そこは世界に向かって虚勢を張る国家統計局長である。銀縁メガネの奥の細い目を時折、記者席の方に泳がせながら、強弁を通したのだった。

〔PHOTO〕gettyimages

「2015年、複雑に錯綜した国際情勢と、不断に増大する経済の下降圧力に向かいながら、党中央、国務院は、戦略的な保持能力を見せた。国内と国際の大局を見据えながら、かつ『平穏な中に進展を求める』という基調を堅持しながら、主導的に『新常態』に適応し、『新常態』を導いてきた。

新しい理念でもって新しい実践を指導し、新しい戦略でもって新しい発展を目指してきた。不断にマクロの調整を創造し、構造改革を深く推進してきた。そして『大衆が創業し、万人が創造する』ことを地道に推進し、経済の総体的な平穏を保持し、それでも平穏な中に進展があり、平穏な中に特長があるという発展態勢を築いてきたのだ……」

このような、いかにも中国共産党的な「前口上」を述べた上で、いよいよ本論に入った。

「初期の概算によれば、2015年のGDPは、67兆6,708億元で、価格計算をすれば、前年比で6.9%増だった。

四半期毎に見れば、第1四半期が前年同期比7・0%増、第2四半期が7.0%増、第3四半期が6.9%増、第4四半期が6.8%増だ。産業別に見ると、第一次産業が6兆863億元で3.9%増、第二次産業が27兆4,278億元で6.0%増、第三次産業が34兆1,567億元で8.3%増だ。前期比で見れば、四半期の成長率は1.6%増だった……」

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