本/教養


祝!芥川賞受賞
作家・本谷有希子、主婦の目を通して見える世界

特別インタビュー
芥川賞を受賞した本谷有希子さん〔撮影〕嶋田礼奈

結婚して価値観が変わった

芥川賞受賞おめでとうございます。本書は受賞作『異類婚姻譚』と、他3篇をおさめた作品集。受賞作では、専業主婦のサンちゃんを語り手にして、主婦の日常をユーモラスに描いていますね。

ありがとうございます。この2年半ずっと机に向かって書いてはやめ、書いてはやめを繰り返していたんです。書こうとしていたのは主婦の話でした。それは2年半前に結婚したことが大きいですね。

以前は劇団の仕事などで忙しくしていましたが、結婚してから家にいる時間が長くなって、自分の感覚や価値観が少しずつ変わっていくのを感じたんです。

具体的に変化に気付いたのは、リビングで洗濯物を畳んでいた時。窓ガラスの向こうの景色を見て〝外〟の世界だと思ったんです。対岸のようなイメージです。

〝外〟はみんな忙しく働いている社交的な場所で、私も今まではあの場所にいたのにと、寂しくもあり、焦りもありました。それで、主婦の目を通して世界がどう見えているのかを書きたくなったんです。

主人公のサンちゃんはのんびりしたタイプ。これまでの女性主人公とはずいぶん違いますね。

最初、試しにいろんな主婦を書いてみたんです。息苦しさを感じている主婦や精神的に追い詰められている主婦を書いても、うまくいかなくて。私自身がそこまで追い詰められていないから無理があるんですね。

やはり自分と重なる部分がないと書けないと気付き、いろんなことを「まあいいか」と受け入れる、のらくらとした怠け者の主人公になりました。

というのも、自分が家の中で過ごすようになって地の部分が出てきたようで、今の私はものすごく怠け者なんです(笑)。