勝谷誠彦「騒乱のバンコク」リアルタイム日記 Vol2村本さんが撃たれた場所に立って

2010年04月18日(日) 勝谷誠彦

勝谷誠彦賢者の知恵

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 たとえカネで動員された人々でもその声にはさらされ続けるのである。洗脳効果は大きいといっていい。私はタイ語はわからないが、喋るそれぞれがかなりの論客であることはわかる。言葉はわからなくても抑揚と人々の反応で、どれほどの演説かということは。今回の出来事がすぐれて「ことば」の力によっているということくらいはモノ書きとして理解できるのである。

 ステージの裏側に来た。ここからが勝負だ。写真家協会のプレスカードと、でかい態度でスッと楽屋裏に入ることが出来た。ステージでは赤シャツの幹部が演説をしている。その横に行けることは行けるのだがどうするか。

 先日から赤シャツはこの付近の商業ビルのオーナーに圧力をかけていた。政府の関係者を入れるなという。つまり上からの狙撃を恐れているのだ。しかしその危険は今なお、ある。ステージに上がるには撃たれる覚悟を持たなくてはいけない。

 詰めかけているメディアも半々だ。乗る連中と下から狙う連中。なぜか日本人の顔は見当たらない。4、50人もいるのにねえ。夕方に NHKで日本人がやっと来て、私の顔を見て驚愕していたが(笑)。タイ人のストリンガー(現地雇用員)にリスクを負わせているのかなあ。

 ステージに上がった。圧倒的な風景を見た。足元にひろがるのは数千人の赤いシャツを着た民衆だ。これを見ないと来た価値はなかったであろう。弁士のひとことづつに拍手を打つ。それが波のように音波となって実際に私の身体を揺るがせるのである。

 話をしているのはアリスマン・ポンルゥアンローンさんであった。赤シャツのリーダーのひとりだ。この日、政府側の急襲にあってそこを逃れたばかりだとあとで知った。

<タイ反政府派の幹部、ホテルから脱出し逮捕逃れる=証言
タイのバンコクで反政府集会を続けるタクシン元首相の支持派団体「反独裁民主統一戦線(UDD)の幹部らは16日、警官隊が取り囲むバンコク市内のホテルから脱出した。現地のロイター・カメラマンが証言した。 >
[バンコク 16日 ロイター]

 彼は手に爆発物から出た破片を乗せてメディアに見せていた。私が聞き取ったのは「朝襲われた時の破片だ」だったが、あとからこの報道を見ると、襲撃された時のものだったのかも知れない。

 メディアにそれを見せることが彼の武器である。私も多くの映像を撮った。そのあと彼はステージの下で警察官にそれらを証拠として提出していた。そしてメディアも私もその場の映像を撮る。このあたりが不思議なところで治安当局もどうやら二股かけている雰囲気があるのである。

 緊張した数刻が過ぎたがどうやら狙撃もされずに私はステージをあとにした。喝采と拍手は怒濤のように続いている。会場をあとにしてもそれは聞こえ続けていた。

もはや何の痕跡もなく

 4月18日。

 2時起床。バンコク時間。

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