大統領選 アメリカ
トランプ旋風が止まらない!?
アメリカでいま何が起きているのか

2016大統領選「異変の構図」
ドナルド・トランプ共和党大統領候補。当初その人気は一時的なものと見られていたが……。アメリカで何が起きているのか?〔photo〕gettyimages

文/渡辺将人(北海道大学)

予想を大きく裏切る事態

「トランプは指名は取れない。一時のブーム。2012年のミシェル・バックマンのように消えるはず」

2015年夏頃、筆者が面会した元オバマ陣営幹部は、こう豪語していた。また、共和党幹部も「トランプには草の根組織がない」と切り捨てていた。発言のトーンに差はあれど、共和党、民主党問わず、アメリカの政治インサイダーに共通していたのは、トランプ人気は一過性という見解だった。

しかし、彼ら政治インサイダーの顔つきは秋以降、またたくまに険しくなって行った。

大統領選挙のキックオフとなるアイオワ党員集会(2月1日)を目前にした今、トランプ人気は衰えていない。アイオワ地元紙「デモインレジスター」の年明けの同州世論調査では22%と2位になったものの、テッド・クルーズ(25%)と僅差で支持率首位を争っている。

アメリカに何が起きているのか。

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2016年大統領選の現時点での「異変」をひと言で表せば、「本来は第3党候補的な人物が、2大政党の候補として支持を集めている」という点にある。

たしかに、イスラム教徒の入国禁止やヒスパニック系移民への厳しい措置など、ドナルド・トランプの歯に衣着せぬ放言に注目が集まっている。しかし、トランプのような型破りで過激な人物は、過去のアメリカの選挙を振り返れば、必ずしも珍しい存在ではなかった。

アラバマ州知事だったジョージ・ウォーレスは「今も人種隔離を、あすも人種隔離を、永久に人種隔離を」と叫ぶ人種隔離主義者だった。1968年の大統領選挙では、公民権運動を支持し始めた民主党を離脱し、アメリカ独立党の第3政党候補となった。

1992年と1996年の大統領選挙に共和党から出て、後に独立系を標榜するようになったパット・ブキャナンも爆弾発言男として知られる。反ユダヤ主義をにおわせるかのような危険な発言で批判されてきた。何度も大統領選挙に出馬したリバタリアン(自由至上主義者)のロン・ポールは、連邦準備制度の廃止や大麻合法化まで主張している(今回は息子のランド・ポールが立候補)。

ただ、いずれも2大政党内で大きな支持を得ることのない第3党的な候補だ。こうした人物が2大政党から出馬しても、党内で首位の座は奪えない。トランプも本来はそうした典型的な第3党的人物である。

トランプの確信犯的な「前科」

日本のメディアで脚光を浴びるのは初めてだが、トランプの大統領選挙への色気は1988年に遡る。2000年には改革党という第3政党から実際に短期間出馬した。連日テレビに出演して、視聴率を獲得した。その度にトランプの不動産事業の宣伝にもなった。2004年、2012年にも「出馬するかも」騒ぎがあった。

「俺は大統領選挙に出馬を考えているんだ」という意志を見せて、メディアに露出し尽くした挙げ句、出なかったり、あるいは出ても途中で離脱することを繰り返してきた、ある種の確信犯的な「前科者」なのである。

選挙を趣味にしている金持ちの道楽か会社の宣伝目的、というのがアメリカ政界やメディアでの過去のトランプ観で、今回の2016年の出馬でも、当初は政治の玄人筋は誰も真面目に相手にしなかった。

しかし、トランプは今回、共和党の候補として立候補する道を選んだ。ここが「異変」なのだ。これに過剰反応したのは、共和党主流派のエスタブリッシュメントである。