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「人工知能はなぜ囲碁で人間に勝てないのか」~AIの限界と人類の未来【特別対談】
『WIRED』日本版編集長×小川和也(前編)
【PHOTO】iStock

人工知能は人類にどのような未来をもたらし、どのように暮らしを変えるのか――。

世界で最も影響力のあるテクノロジーメディア『WIRED』日本版編集長の若林恵氏、『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)の著者で人間とテクノロジーの未来を考える小川和也氏による、「人工知能の未来」をテーマとしたトークイベント「人類は人工知能をどこへ導くのか」(昨年12月10日開催)を特別公開!(buddyz[http://talkshow.buddyz.life/event/22/]主催)。

人工知能は戦争がお好き?

小川:『WIRED』vol.20では、人工知能について相当突っ込んだ特集をされていますね。特にシンギュラリティ(人工知能が人類の知能を超えてしまうという問題)についてはこってりと。

若林:2015年のお正月に、神戸大学の名誉教授の松田卓也先生とお話する機会があったんです。彼はシンギュラリティ論者なんですが、彼の人工知能に関する話を元に、これでカンファレンスみたいなことができたらいいなと思って企画書を作ったんです。それを経済産業省の方が賛同してくれて、スポンサーもすぐに見つかったので、興味がある人が多いんだなと思ったんです。

ただ、そうは言ってもまだ多くの人は人工知能に関して明確なビジョンを持っているというよりは、なんとなく面白そうな領域だなと思っている程度のはずです。「自分たちの領域でビジネスとして使えるのかな」といった感じで考えている人が多いと思いますし、今日ここにいらっしゃった方の多くもそうかもしれません。

ことビジネス的な視点でいうと、いろんな人がAIについて話すようになってきましたし、Googleが自律走行車を作ったり、DeepMindという企業を買収したりして、世界は動いている感じがすごくしますよね。

小川:僕もこの『WIRED』を読ませてもらいました。“人工知能はどんな夢を見るか”という企画タイトル、個人的に気に入っていますが、出てくる人も、読んでいる人も、圧倒的に男性が多い印象で。これは気のせいでしょうか(笑)。

僕の著書『デジタルは人間を奪うのか』は、テクノロジーの話には距離があるし、難しそうだなという印象を持っている人にも手に取ってもらいたいと思って書いたんですね。女性や学生でも読みやすいものにしようと。だけど、やっぱり手に取ってくれたのは圧倒的に男性なんですよね。

若林:どうにも女性にはあまり受けませんよね、このテーマ(笑)。

小川:実際、今日の会場も圧倒的に男性比率が高いんですが、どうしたら女性がこういう話に興味を持つのかなと。

若林:どうでしょうね。といって、ふつうの女の子が熱心に「やっぱAIだよね」とか語っているのがいいのかどうかって気もしますが(笑)。ただ、人工知能を語るときによく話題にされる「人工知能は人間の仕事を奪うのか」といった議論なんかも、基本男性原理なもののような気はしますよね。

デジタルテクノロジーの推移の話をすると、たとえば2000年からの10数年は、Appleが伸びてGoogleが出てきて、FacebookやTwitterといった新しいテクノロジーが人々の生活に一気に入ってきた時代でした。その後、シリコンバレーのスタープレイヤーがAppleやGoogleからAirbnbやUberに変わって来ています。

僕の中ではエンジニアが駆動してきたイノベーションから、広義のデザインドリブンなものに変わっていっている印象があって、感覚的な捉え方、物事の設計が非常に重要になってきているのではないかと。そういう意味では、これから女性の果たす役割はもっと大きくなっていくんだろうと感じています。

小川:確かにそうですね。男性脳、女性脳の話ではないですが、右脳と左脳の比重がそれぞれ違うということはひとつの見解としてあるわけです。もちろんそこには個人差もあって、一概に性別で区分仕切ることもできないとは思っているんですが。

とある週刊誌で、脳外科医と政治学者と3人で人工知能と政治をテーマとした座談会をやったんですね。その中に、「人工知能が政治をやった方が世の中は平和になるんじゃないか」というアジェンダもあったのですが、物事を全て合理的に進めようとすると一見正しい方向に行きそうですが、実はもめ事が多くなったり、戦争が起きやすくなるという見解もあるんです。

若林:それはおもしろいですね。