『利己的な遺伝子』以来の衝撃!「人類」と「意識」、根源的問いに読書で迫る
熊谷 達也 プロフィール

意識という次元をひもといた脳科学

ずいぶん前、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』を読んで、人生観が変わるほどの衝撃と感銘を受けた私だが、それに匹敵するような読書体験をすることになった。

意識とはそもそも何かという問いかけは、今こうして意識を持って生きている私たちにとって、最大の難問であるかもしれない。

精神的なものと物質的なもののあいだには埋めがたい溝があるとするデカルト以来の二元論に対して、現代に生きる私たちは懐疑的ではあるものの、心情的には受容したい。

そのあたりが、私たちの多くに共通しているところだと思う。誰しも、死んだら自分の意識が消滅するとは思いたくないが、ここまで科学が発達した社会に生きている以上、脳の活動と意識を切り離して考えることはさすがに難しい。

この難問に明確な解答を与えるのが「統合情報理論」である。詳細は本書をひもといてもらうとして、脳のどの部分がどういう状態にある時に意識が生まれるか、ついにそれが明らかになったのであるから革命的な出来事である。しかも単なる仮説ではない。実験によって検証された理論なのだ。

たとえば、植物状態や昏睡状態に陥っている患者に意識があるのかないのか、その判定が可能になったのだから、凄いとしか言いようがない。

統合情報理論などと聞くと、何やら難しそう、と腰が引ける読者がいるかもしれないが、その点についてはまったく心配しなくていい。私がこれまでに読んできたこの手の本では、ベストスリーに入るわかりやすさと面白さであるのは間違いない。

『週刊現代』2016年1月16・23日号より