テロ
行き詰まった「イスラム国」の次なる拠点はどこか? 
~カオスと化す中東、"恐怖の連鎖"に終わりはこない

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」
〔PHOTO〕gettyimages

昨年12月29日夜、ロシア南部のダゲスタン共和国で国境警備隊の1人が死亡、住民ら11人が負傷する銃撃事件が発生した。イスラム過激派の動向を調査するアメリカの機関「SITE」は、過激派組織IS(「イスラム国」)が犯行を認めたという。これが事実ならば、ISがロシア国内でテロを起こすのは初めてとのことだ。

ISはなぜロシアで銃撃事件を起こしたのか? 生存圏が縮小するISの次なる目的はなにか? さらに、宗派の違う周辺諸国とスレスレの連携を図る中東の状況を佐藤優氏が明かす。

※本記事は現代ビジネスが配信するメルマガ『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまる・じゃぱん」の放送内容(2016年1月1日放送)を一部抜粋して掲載しています。

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太田:昨年末に、イスラム国がシリアやイラク領内でだいぶ追いつめられ、かなりの拠点が政府側に奪還されたという報道がありましたが、この銃撃事件もIS側が危機感を持っているということの現れなのでしょうか。

佐藤:そうだと思います。この状況のなかで、ISの勢力がダゲスタンにまで伸びてきたのが深刻なんです。ダゲスタンはカスピ海に面していて、南側がアゼルバイジャン、さらに先の南がイランというところに位置しています。

ダゲスタンは小さい民族がたくさん集まっている地域で、日本アルプスのような山岳地帯なんですが、谷ひとつ、山ひとつ超えると、もう言葉が通じないまったく違う民族が住んでいる場所なんです。そこにダゲスタン・チェチェン人という人たちも住んでいます。

赤部分がタゲスタン、その南にはアゼルバイジャン、さらにイランが位置している[Google mapより]
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太田:チェチェン人が住んでいるんですね。

佐藤:そうです。大昔のことなんですが、1860年、19世紀にロシアがチェチェンやダゲスタンを占領したときに、その支配を良しとせずに、オスマン帝国のトルコに逃げた人たちがいました。その末裔が今、シリアに住んでいます。

彼らはチェチェン語をしゃべり、見た目もそっくりです。この辺の人たちがテロリストとしてロシア内に潜入しても、なかなか見抜けない。かつてチェチェン紛争が深刻になったときも、シリアのチェチェン系の人たちが相当入ってきているんです。

太田:なるほど。

佐藤:ですから、この辺りの人たちがロシア国内で本格的に騒動を起こそうとしていることは、戦線を拡げる入り口だと思います。太田さんのおっしゃる通り、イスラム国は今、大変なんです。去年1年で12~13%の支配領域を減らしていますから。

太田:失ってしまったということですね。

佐藤:はい。ということは、キツくなったときは戦線を拡げるんです。

太田:逆に。

佐藤:われわれに手を突っ込むと大変なことになるよと、パリやベイルートでテロを起こし、エジプトのシナイ半島でシャルムエルシェイク発のロシアの飛行機を爆破した。今度はダゲスタンに手を出したということです。今後はこういうことがどんどん起きてくると思います。