ユーミンにも売れない時代があったんだ【特別対談「荒井由実」を語ろう】

2016年01月12日(火) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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日本が活気に満ちていた時代

有賀 アルバムの制作に時間もお金もかかっていたから、村井さんはレコード会社の社長として心配だったんじゃないですか。

村井 いや、全然気にしなかったね。そもそも自分の好きなレコードをとことん作りたいという気持ちでアルファレコードを作り、スタジオAを作ったわけですから。制作費がいくらで、回収するためにどのくらい売ればいいのかなんて、考えたこともなかった。

チェン 最先端のスタジオに最高のミュージシャンが集まり、好きなだけ時間をかけて作ったからこそ、あれだけの作品になったんでしょうね。大人になりたい少女の純粋さ、理想を求める部分が情景描写の中に描かれていて、当時の音楽界でも個性的だった。レコードが完成した後、ユーミンはわざわざ僕の家までアルバムを届けてくれたんですよ。「これ作ったのよ」って、とても嬉しそうだった。

村井 このアルバムは、当時発売されたどのレコードよりも音質が良いですよ。もう、ぶっちぎりに良い。

有賀 レコーディング・ディレクターだった立場から言えば、歌はもうひとつだったかもしれない。でもその拙さがいいですよね。あのときあのメンバーが集まらなければ、この音は作れなかったと思う。アルバム『ひこうき雲』はそれまでの音楽とは全然違った。

すごく新しかったし、主張がはっきりしていたし、色彩があった。本当に優れていた。だから今でも多くの人に聞かれているのでしょう。

チェン そうですね。それにこのアルバムには、日本が活気に満ちていて、未来に向かって色んな可能性を秘めていた当時の〝空気〟が閉じ込められています。

村井 ただ、こんなにいい作品なのに、発売後しばらくは売れなかったんですよ。とりあえずラジオの深夜放送で曲を流してもらって、次はライブをやってみようとなって。作っている間は、どうやって売ろうかなんて考えたこともなかったから。

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