雑誌 ドクターZ

人民元はなぜ「国際通貨」と呼べないのか?
”マイナス成長”中国、下落が止まらない

〔PHOTO〕gettyimages

中国からの資金流出に、懸念の声が高まっている。

11月30日に開かれた国際通貨基金(IMF)の理事会で、特別引き出し権(SDR)の構成通貨として認められた人民元。これで一応、「国際通貨」の仲間入りを果たしたことになる。

だが、喜びもつかの間、12月14日の上海外国為替市場で、人民元は4年半ぶりの安値に下落。世界銀行も、「減速する新興国市場」と題した報告書を発表し、米利上げに伴って中国など新興国の通貨を売る動きが強まると予測した。

しかし一方の中国の中央銀行にあたる人民銀行は、この市場の動きに対し、「人民元が下落を続ける基礎的条件はない」と強調。一定範囲内の人民元安を容認した。

いったい、中国政府のこの自信は、どこからくるのか。そもそも、人民元は本当に「国際通貨」と呼べるものなのか。

まずは、中国という国の経済体制が、「普通」の資本主義先進国とは、まったく異質なものだということを理解しなければならない。

中国は、一党独裁の社会主義国である。一党独裁ということは、政治的自由はない。政治的自由がないということは、経済的自由が制約され、私有財産制もない。これらは、投資取引が完全には自由にならないことを意味する。

社会主義国であるので、企業は基本的に国有である。当然、民間企業が中心の資本主義国とは、ルールがまったく異なってくる。国有企業は計画経済の一部であり、計画達成が至上命令だ。

また、中国政府が国有企業の所有主体として各種の経済統計も作るので、計画達成のために統計の改ざんが日常茶飯事に行われている。

為替介入という中国の「伝家の宝刀」

1990年以降の中国の経済成長率は10%ほどだが、改ざんを考慮すると、中国の「本当のGDP」は、現在の3分の1程度だろう。直近の成長率についても、本当はマイナスである。

つまり、中国政府が、「人民元の下落は止まる」と言い切るのは、為替介入という「切り札」を持っているからなのだ。

一定範囲内での人民元安を容認して、市場が人民元をどう見ているかを判断した上で、最終的には、政府が人為的に市場の売り圧力を封じ込めればいいと考えている。

こんな国なのだから、当然、人民元も国際通貨と言えるものではない。国際通貨であるならば、国際間での「自由な取引」が確保されていないといけないが、人民元でそれはできない。

たとえばTPP(環太平洋パートナーシップ協定)でも、中国の体制問題が障害になってくる。前述したように、中国には国有企業が多いが、TPPには政府による過度な国有企業への融資などを規制する内容が含まれているため、TPPへの加入において大きな障害になる。

さらに、これも前述したとおり、投資の自由化も進んでいないため、国際間の証券の売買といった「資本取引」の自由化も不可能である。そうなると当然、人民元の自由化もできない。

つまり人民元は、本当の意味で国際通貨とは言えないのだ。形だけ国際通貨になっただけで、その中味は、将来の希望も見えない、張り子の虎である。

『週刊現代』2016年1月2・9日合併号より

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