賢者の知恵
2016年01月02日(土) なべおさみ

昭和の怪物、勝新太郎一家の豪快すぎる日常〜「30分で届けに来たら、新車1台買うよ」

なべおさみが明かす

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昨年末に公開した記事『独占スクープ「ヤクザと芸能界、ぜんぶバラすぞ」〜なべおさみが見た昭和の大スターたちの実像』が大好評。そこで今回は、なべおさみ氏の著書『昭和の怪物』から、勝新太郎、若山富三郎ら名優たちの素顔を明かした一節を特別公開する。

「おい、割り勘って英語でなんて言うんだ?」

江波杏子、渥美マリと写る勝新太郎


「俺はゴルフなんてやらないよ。玉を打つなんて出来るわけない。『たまを』打つなんてね!」

これは勝さんの、ある時期気に入っていたジョークだった。洒落を説明するのもおかしいが、勝新太郎の妻が、中村玉緒だと知る者にだけ通じるギャグだった。

「『玉を』打つ、『玉を』打つ、『玉緒』打つ、玉緒ぶっとばすなんて、しませんよ!」

長い事そう言っていたが、結局、玉を打つプレーに熱中して、チョコレートを分捕っては「勝つ! 新太郎!」なんて悦に入っていた。

ある時、兄の若山富三郎さんと父親の長唄師匠、杵屋勝東治(きねや・かつとうじ)さんとアメリカ旅行に出かけた。母上も一緒だったと聞いた。そして初めて外国で汽車に乗った。

外国旅行も経験に乏しい時だったから、少し先を行っていた若山さんが全てを仕切っていた。売れ方も役者として勝さんをリードしている頃だったから、そうするのも自然だったのだ。そして何より、兄だった。

勝さんは若山さんを「お兄ちゃん」と呼んだ。私が勝邸に入って住み込み付人となった昭和35(1960)年で、そう呼んでいたのだから、映画界に入る前から、家庭内でもそういって育ったのだろう。若山さんは勝さんを「利夫!」と本名で呼んでいた。これも同じだと思う。この二人の人間関係は上下がぴしっと決まっていて、兄が絶対でありました。

しかしこの上に最大権力者が存在していて、この人には二人がどれほど有名になり、大物になっていこうとも敵いません。

それが「お父ちゃん」でした。

お父ちゃんは絶対の上の絶大で、二人の仁王様の如き特異能力役者でも、お父ちゃんの前では矜羯羅(こんがら)童子・制迦(せいたか)童子のようになってしまう。さながらお父ちゃんが、童子を従えて立つ不動明王に見えて来るから不思議だった。仁王は、御存じのように阿仁王と吽(うん)仁王の兄弟で、怒ると合体して、宇宙で一番硬い物質の金剛に変化して金剛力士となる。

その二人が「お父ちゃん」の前では不動明王に仕える童子に見えてくる。

このアメリカ旅行も、兄弟が映画界で一人前になった証拠をみせる為に、両親にプレゼントしたものでした。四人はアメリカ横断鉄道の食堂車に居ました。テーブルに着くと若山さんが言いました。

「利夫! 気が付いたら、お兄ちゃんばかりが払っていないかい? ここはひとつ、割り勘でいかないか?」
「いいですよ! そうしましょ!」
「でもな、お前、英語でワリカンってどう言うんだ?」
「……?」

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