現代新書
『ハウス・オブ・カード』の衝撃〜ネットフリックスのオリジナルコンテンツ戦略がすごい
ネット企業には放送局のようなドラマは作れないという思い込みを打破した『ハウス・オブ・カード』

オリジナルコンテンツで「放送」に並ぶ

ネットフリックスは、2010年以降、ビジネスの軸足をSVOD(定額制のビデオ・オン・デマンド)に移し、順調にビジネスを拡大していった。しかし2012年になり、経営方針はふたたび大きく変化していく。現在の隆盛は、その戦略が成功したためと考えていい。

2012年になり、ネットフリックスは、突如「オリジナルコンテンツ重視」の戦略へと舵を切った。

それまでSVODとは、レンタルビデオのビジネスモデルをネットに置き換えたものだった。レンタルビデオのビジネスモデルとは、映画やドラマといったコンテンツのネット配信権を、映画会社や映像制作会社から借り受けたうえで、再生1回につきいくら、というかたちで収益を返すものである。ネットフリックスも、最初はレンタルビデオからスタートしたのだから、そうなるのが自然だった。

だが、2012年から開始した「オリジナルコンテンツ重視」の施策は、レンタルビデオモデルとは根本的に異なる。自分で資金を準備して映像制作会社などに話を持ちかけて、できあがった作品を流す、というモデルになるからだ。儲け方はさまざまだが、出資者であるネットフリックスがより高い利益を得られる仕組みといっていい。

SVODがオリジナルコンテンツを、というと珍しく思えたが、実際にはありふれたビジネススキームである。放送局がやっている、「オリジナル番組を作って放送で流す」というやり方を、そのままネットに展開しただけなのだ。

ネット企業がオリジナルの映像を作る、というアプローチも、決して珍しいものではなかった。ただ、多くの人はそこに過大な期待も抱いてはいなかった。「しょせんネット企業が作るものは、放送局の作るドラマとは違う」と思い込んでいたためだ。

そんな思い込みを打ち破る作品が、2013年、ネットフリックスから登場した。同年ネットフリックスで配信されたドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(デヴィッド・フィンチャー監督作品)は、アメリカ映像業界で「ドラマ界のアカデミー賞」と言われるエミー賞の9部門にノミネートされ、監督・撮影・キャスティングの3賞に輝いたのである。

「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は、ネットフリックスが企画とプロデュース、そして出資の一部を担当し、実制作をソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が担当し、制作費の面でも制作体制の面でも、既存のテレビドラマに勝るとも劣らないかたちで作られた。

それがエミー賞を受賞したということは、もはやコンテンツ制作能力において、放送局や独立系映像制作会社とネット企業のあいだに差がないことを証明したことになる。

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