村上春樹のライバルたち!? 話題の翻訳家・鴻巣友季子が選んだ2015年の海外小説ベスト12!
年末年始にぜひ読んでほしい「この一冊」
鴻巣 友季子

2015年海外・翻訳文学 ベスト12(順不同)

1 リチャード・パワーズ『オルフェオ』木原善彦/訳 新潮社
2 ミシェル・ウエルベック『服従』大塚桃/訳 河出書房新社
3 ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』中嶋浩郎/訳 新潮社
4 ミュリエル・スパーク『ブロディ先生の青春』木村政則/訳 河出書房新社
5 ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』野谷文昭/訳 白水社
 ロベルト・ボラーニョ『はるかな星』斎藤文子/訳 白水社
6 レアード・ハント『優しい鬼』柴田元幸/訳 朝日新聞出版
7 セサル・アイラ『文学会議』柳原孝敦/訳 新潮社
8 呉明益『歩道橋の魔術師』天野健太郎/訳 白水社
9 フィル・クレイ『一時帰還』上岡伸雄/訳 岩波書店
10 イーユン・リー『独りでいるより優しくて』篠森ゆりこ/訳 河出書房新社
11 リュドミラ・ウリツカヤ『子供時代』沼野恭子/訳 新潮社
12 デイヴィッド・ミッチェル『出島の千の秋(上・下)』土屋政雄/訳 河出書房新社

番外編 「宇治拾遺物語」町田康/訳(『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集8巻』所収)河出書房新社

えーと、活字離れ、本離れと言われつづけておりますが、そのなかでも、なかなか手にとってもらえないのが、ここに挙げたような、海外の、翻訳ものの、文学作品です。今年も、ミステリやSF、ファンタジーなどのジャンル小説は、ピエール・ルメートル『天国でまた会おう』(ハヤカワ・ミステリ文庫)(厳密にはミステリじゃないかも、ですが)や『悲しみのイレーヌ』(文春文庫)、ピース又吉さんの愛読書としても知られるケン・リュウ『紙の動物園』(早川書房)などが、快調な売れ行きを見せているようですね。その陰で、いや、陰にいるつもりはないんだけど、おもしろくて刺激的な文学作品が他にもたくさん訳されておりますが、なかなかサークルの外に声が届かないんですよう!! もしもーし、聞こえますでしょうかー?

はい。ご傾聴ありがとうございます。

今年の海外小説は時勢のせいか、やはり戦争、クーデター、テロなどに材をとった小説が多く訳されたように思います。2、4、5、9、10あたりですね。

また母語ではなく第二、第三の言語で書く作家、マルチリンガルの作家、国や文化圏を越境する作家も近年、大活躍しています。3、8、10、12などはその好例かと思います。

ベテラン作家が訳者の力で再評価されるという幸運なケースもあります。4、7、11などがそれに当たります。いくら昔の小説でも、いま訳せば現代の新刊として出せますし、何度でも新訳してアップデートできるのが、翻訳書の強みだと思います。

ともあれ、2016年も、海外の翻訳小説をどうぞよろしくお願いします!

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『風と共に去りぬ』第1巻~第5巻 マーガレット・ミッチェル/著 鴻巣友季子/訳(新潮文庫)

アメリカ南部の大農園〈タラ〉に生まれたスカーレット・オハラは16歳。輝くような若さと美しさを満喫し、激しい気性だが言い寄る男には事欠かなかった。しかし、想いを寄せるアシュリがメラニーと結婚すると聞いて自棄になり、別の男と結婚したのも束の間、南北戦争が勃発。スカーレットの怒濤の人生が幕を開ける――。小説・映画で世界を席巻した永遠のベストセラーが新訳で蘇る!