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朝日新聞「驚きの敗訴」で見えたカジノビジネスの「光と闇」
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朝日が負けた理由

朝日新聞社が慰安婦報道、原発報道に誤りがあったと発表したのは昨年夏のこと。社長の退任に発展したのち、今年は新体制下で信頼回復に努めていた。そんな矢先に、また一つ、朝日新聞社は大きな痛手を負うことになった。今年12月21日、名誉毀損裁判で負けてしまったのだ。

朝日新聞社を訴え勝訴したのは、株式会社ユニバーサルエンターテインメント(UE社)。大手パチスロメーカーで、カジノビジネスに取り組んでいる企業だ。

朝日新聞が、UE社のカジノビジネスを巡って【フィリピン政府関係者に対する「接待」と不明朗な「巨額送金」が行われたのではないか】という疑惑を一面で報じたのが、今からちょうど3年前の年末、2012年12月30日だった。

その後、2013年2月までの間に断続的に掲載された合計5本の記事が名誉毀損に当たるとして、UE社は1億円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めていた。

東京地裁は、謝罪広告の掲載請求は棄却したが、5本のうち4本の記事を「摘示した事実の重要部分において真実であるとは認められず、真実であると信じる相当の理由があるとも認められない」と判断し、ウェブサイト(朝日新聞デジタル)から記事を削除させるとともに、330万円を賠償するように命じたのだ。

一部では、「まさかこの件で朝日が敗訴するとは」と驚く声も上がっている。裁判はまだ一審判決に過ぎず、控訴審で新たな法廷闘争が繰り広げられるだろう。とはいえ、この裁判は、ひとつの大きな教訓を教えてくれる。それは、カジノビジネスの抱える「闇」について、である。「日本にカジノを」という声が高まりをみせるなか、この一件をもとに、カジノビジネスの「光と闇」について考えてみたい。

「フリーリポート」

実は、UE社のフィリピンカジノ事業を巡る「毀誉褒貶」には、前哨戦がある。それは、UE社とアメリカのカジノ業者「ウィン・リゾーツ・リミテッド」(ウィン社)との仁義なき戦いである。

2012年2月、UE社のビジネス・パートナーだったウィン社が突如、「UE社がフィリピンの娯楽賭博公社幹部を接待して、FCPA(連邦海外腐敗行為防止法)に違反したと一応みられる」といった内容の調査報告書を公表した。FCPAとは外国の公務員に対する贈賄を禁ずるアメリカの連邦法である。

報告書を書いたのは、ウィン社が雇った元FBI長官ルイス・J・フリー氏が率いる法律事務所(Freeh Sporkin & Sullivan, LLP)だ。問題となった朝日新聞の記事は、この「フリーリポート」を受けて、朝日新聞が「独自」に取材した結果に基づくものだった。

しかし、東京地裁は、朝日新聞がフリーリポートの「裏付け取材」をしたかもしれないが、接待の「賄賂性」に関する「裏付けがされたことの証拠はない」として、真実性を否定したのである。日本の裁判所がアメリカの連邦法であるFCPAの中身の判断にまで踏み込んだ例は極めて珍しい。