ISSEY MIYAKEという「ブランド」を受け継ぎ、守り、進化させていくために僕が決めていること
ISSEY MIYAKE 宮前義之【第3回】
向田麻衣さんと宮前義之さん
日本を代表するファッションブランドISSEY MIYAKEのデザイナーを務める宮前義之さん。クリエイションとビジネス、ワークとライフ、その「バランス」をどうとっているのか?ブランド継ぐということはどういうことなのか? 第3回は、個人の仕事、そしてチームでブランドを永続させるための秘訣についてお話を伺います(構成・徳瑠里香/写真・岡村隆広)。

制約があったほうが新しいアイデアが生まれやすい

向田 宮前さんはデザイナーの仕事はここからここまでと決めずに、そのすべてに心を砕いていらっしゃいます。かかわる人のやる気を引き出すといったマネジメントのお仕事も入ってきますよね。服を作って表現することとビジネスをすることのバランスについてはどう考えていらっしゃいますか?

宮前 自分のなかにはいくつかチャンネルがあって、クリエイションに割けるのは2割くらいしかないかもしれません。最近はマネジメントの部分が増えてきています。そこにあるフラストレーションが実はものづくりに活かされているのかもしれませんが。

向田 私の友人のクリエイターは非常にストイックなところがあって、ある映画監督はどこかから飛び降りてしまわないために作り続けているといいました。また、ある小説家は創作に没頭していて生活に戻ってきたときに親の顔がわからなくなった、と。創作の海の底に潜り込んで、現実社会に戻ってくるとき、負荷がかかると思うのですが、どのようにいったり来たりしているのでしょうか。

宮前 自分の場合、理論的な思考をするケースが多いです。今はISSEY MIYAKEというチーム体制でものづくりをしているので、感性の部分は女性のスタッフの意見を出来るだけ取り入れるようにしていて、新規開発や仕事の効率化を図る部分を自分が考えたりしています。結果、それもデザインするためのマネイジメントなので。

新しいアイデアを生み出すとき自分はゲーム感覚に近いですね。限られた制約のなかでどうやって最高のものを作れるか。例えば一つの生地をいつもとは違う視点で掘り下げていくと色んな可能性が出てくる。そういう点をつなげるとアイデアになっていくのです。

僕は制約があったほうが燃えますね。料理であればスーパーでなにを買っていいから美味しいものを作って、と言われるよりも、この食材でいままで食べたことのないようなものを作って、と言われるほうがやりがいを感じる。

制約のなかでいかに最大限の魅力を引き出すか、を突き詰めるとアイデアが浮かんできます。ものごとを違う視点で眺め、可能性を浮き上がらせていくことがこれまでにないアイデアを出すプロセスでは大切です。

向田 ネパールで手に入るものは本当に限られているので、Lalitpurの商品は制約の中から生まれたアイデアばかりです。一種類の原料をどこまで深められるか。例えばジャタマンシーという高山でとれる植物の根っこからとれるエッセンスオイルがあるのですが、どの山からとるか、どの季節にとるか、どういった精製方法にするか、花も枝も入れるのか…といったことで変わってくるんですね。限られているからこそ、その植物の力を最大限引き出すために、試行錯誤を重ねて作っています。

Lalitpurの商品の原料生産者を訪ねた際の写真

宮前 制約があったほうが強い力を引き出せますよね。

クリエイションとビジネスのバランスは大事だと思いますね。それは会社でも同じ。僕はデザイナーとして、コレクション全体の商品構成を考えるときに定食のお盆をイメージしています。パリコレに出すようなものは高カロリーなおかず、今日自分が着ているプリーツのようものは何度着ても飽きない、毎日食べたいごはん。

もちろん付け合わせになるような商品もあって、その商品のカロリーバランスがビジネスの上でも大事だと思っています。例えば、自動車会社も最新技術のF1カーも作れば街中を気持ちよく走るための車も作っていますよね。

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