格闘技

井上尚弥は「世界最高のボクサー」になれるか?ローマン・ゴンザレスとの一戦を徹底シミュレーション

父が語り尽くす
井上 真吾

ボクシングを超えたスターになれ!

大橋会長は二人にこう言います。

「四団体が承認されてから日本に10名近い世界チャンピオンがいる時代になった。ファンがチャンピオンを選ぶ時代になった。同じ時代に強い選手がいたなら迷わず戦え。小さな記録よりも、誰と戦ったのか。そして誰に勝ったのか、が重要だ」。

一呼吸入れた後、こう続けます。

「やがて日本ボクシング界の枠を超えたスターとなれ。サッカーの本田圭佑、野球の野茂英雄やイチロー、田中将大のように競技の枠を超えたスターとなれる日が訪れるから」

その言葉に二人は大きくうなずき返します。

【PHOTO】gettyimages

ボクシングを始めたばかりの二人の拳は真っ白で柔らかく、自分の手のひらにすっぽりと包み込めるほどの大きさしかありませんでした。拳骨は傷ひとつなく、小さく真っ白でした。

「目の前に自分と同じ身長の相手をイメージして。グーのままバンザイして両手をゆっくりと目の前に下ろす。右手はあごの下、左手は軽く握って、打った瞬間にぎゅっと握る。これがジャブだ――」。

左に体重を移しながら右足の蹴りとバネでパンチを打つと、二人の子どもはしきりに真似をしていました。16年前のあの日、あのときがすべてのはじまりだったのです。たどたどしい動きながらシャドーを終えると、尚は肩で息をしながら「父さん」と呼びかけて、こう語りました。

「拓と二人で世界チャンピオンになるからね。ベルトをプレゼントするからね」。
尚は親指をグイッと突き出して笑います。自分も親指をグイッと突き出して、
「そうか、楽しみだな!! じゃあ練習だぁ!!」

 ――大きな返事が雲ひとつない青空に響き渡っていくのでした。

12月17日に発売。父・真吾氏が明かす「井上家の強さの秘密」とは?