先進国を狙う新型テロ「サイバー・パールハーバー」の脅威!

山田 敏弘 プロフィール
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また、300種類以上のマルウェア(有害な動作をさせる悪意あるソフトウェア)を駆使して、アメリカに対してハッキングを行っている。これらの数字は、アメリカに限ってわかっているだけであって、現実の数はさらに多いとみられている。

さらに中国は、人民解放軍の「61398部隊」と呼ばれるサイバー部隊などを使い、世界中の企業やインフラなどに侵入している。目的は、知的財産を盗んだり、有事に向けたスパイ工作だったりする。

FBI(米連邦捜査局)は2014年5月に、原発や鉄鋼関連企業をハッキングした疑いで61398部隊の将校5人を起訴しているし、中国の関与が疑われる電力遮断事件も起きている。またカナダの電力会社も中国のハッカーに侵入されていたことを明らかにしている。

他の国も中国に負けてはいない。ロシアは2008年に中東で米軍のシステムに侵入したことがあるうえ、トルコの石油パイプラインをサイバー攻撃で爆破した過去もある。最近サイバー能力を高めているイランも、インフラなどへの攻撃能力を付けてきており、2012年にはライバル関係にあるサウジアラビアの国営石油企業サウジ・アラムコに大規模なサイバー攻撃を行っている。

北朝鮮も2013年に韓国のテレビ局と銀行などを大規模攻撃している。また2014年に金正恩第一書記を暗殺する映画『インタビュー』をめぐって米ソニー・ピクチャーズに大規模なサイバー攻撃を行ったケースは記憶に新しい。3500万ドル以上の損出となったソニーへの攻撃は、アメリカが誇るエンターテイメント・インフラへの攻撃でもあった。

そのようななかで、国家に限らず、非国家主体であるイスラム国のような組織がサイバー・パールハーバーを引き起こす可能性が懸念されているのだ。イギリスは最近、イスラム国とアノニマスのサイバー攻撃合戦の舞台となっており、集中放火を浴びて話題になっている。さらに、イスラム国がアメリカのインフラに侵入しようとした形跡も報告されている。

数十万円で実行可能

サイバー攻撃を仕掛けるコストは、驚くほど安い。テロ組織でも数十万円から数百万円で、他国のインフラ攻撃に応用できるマルウェアや、ゼロディ(まだ知られていないソフトウェアなどの脆弱性)を手に入れることができるといわれる。そのうえでハッキング能力に長けたシンパや現地の協力者がいれば、テロリストによる大規模サイバー攻撃の現実味はぐっと上がる。

セキュリティ会社ビットディフェンダーのチーフ・ストラテジストであるカタリン・コソイはイギリスの状況を見て、「最悪のシナリオは、携帯から水道供給網、電力やガスにわたるすべてのコミュニケーションと重要インフラを無能化されることだ」と警告している。しかも、テロ組織は地下に潜れば様々な攻撃手段を手に入れられるために、今後その能力が洗練されていく可能性もあるという。

もちろん公表されている以外にも、数多くのサイバー攻撃が世界中のインフラを襲っている。そしてアメリカは予算を増額して、サイバー空間での報復や戦争に向けた対策や準備を着実に行っている。米サイバー軍とNSA(国家安全保障局)は世界各地のネットワークに侵入したり、万単位でコンピューターを支配下に置いたりしている。

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