『火花』は入ってる?話題の翻訳家・鴻巣友季子が選んだ2015年の日本小説ベスト12!
年末年始にぜひ読んでほしい「この一冊」
鴻巣 友季子


2015年日本文学 ベスト12(順不同)

1 星野智幸『呪文』河出書房新社
2 円城塔『プロローグ』文藝春秋
3 四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』講談社
4 中島京子『長いお別れ』文藝春秋
5 村田沙耶香『消滅世界』河出書房新社
6 江國香織『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』朝日新聞出版
7 磯崎憲一郎『電車道』新潮社
8 小川洋子『琥珀のまたたき』講談社
9 滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』新潮社
10 上田岳弘『私の恋人』新潮社
11 川上未映子『あこがれ』新潮社
12 青木淳悟『匿名芸術家』講談社

番外編(超期待) 高橋弘希『朝顔の日』新潮社

こうして振り返ってみると、新鋭・気鋭の小説家の活躍が目立っていますね。3、5、9、10、番外編(超期待)など、これからもますます期待の書き手です。

また、最近の傾向としては、もうこれは世界中の潮流ですが、やはり日本でも伊藤計劃の『ハーモニー』(ハヤカワ文庫)あたりから、ディストピア流行りが目立ちますね。ディストピアとは、ユートピアの顔をした恐るべき管理社会を風刺的に書くもので、リストでは1と5がまさにそうです。

個性的というかやや前衛的な作風が多いのは、私の趣味というだけでなく、昨今の日本の文学界の特徴かと思います。「小説って、急に登場人物とか出てきて、お話を語って、何やっちゃってんの?」という、みんながうっすら抱いている根本的な疑問を面白く読ませる作品が多い。2、3、9、10、12、番外編(超期待)あたりは、旧来の物語を解体することで、世界の秘密を解き明かすスリルがあります。

また逆に、ベテランの悠々たる語りの舟に身を任せて、物語の愉楽を堪能できるのは、1、4、6、7、8、11です。これも読書の醍醐味ですね。

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『風と共に去りぬ』第1巻~第5巻 マーガレット・ミッチェル/著 鴻巣友季子/訳(新潮文庫)

アメリカ南部の大農園〈タラ〉に生まれたスカーレット・オハラは16歳。輝くような若さと美しさを満喫し、激しい気性だが言い寄る男には事欠かなかった。しかし、想いを寄せるアシュリがメラニーと結婚すると聞いて自棄になり、別の男と結婚したのも束の間、南北戦争が勃発。スカーレットの怒濤の人生が幕を開ける――。小説・映画で世界を席巻した永遠のベストセラーが新訳で蘇る!