賢者の知恵
2015年12月28日(月) 荻田和秀,坂本美雨

綾野剛の「プロ意識」にシビれた
〜ドラマ「コウノドリ」制作秘話

特別対談・荻田和秀×坂本美雨【第3回】

upperline
坂本美雨さんと荻田和秀先生

周産期医療を舞台にした物語『コウノドリ』。ドラマは大好評のうちに最終回を迎えました。産科医にしてジャズピアニストという異色の主人公・鴻鳥サクラのモデルとなった荻田和秀先生(大阪りんくう総合医療センター泉州広域母子医療センター長)と、『コウノドリ』の大ファンだという、第一子を出産したばかりの坂本美雨さん(ミュージシャン)の特別対談をお届けします。今回は周産期医療の現場、そしてドラマの制作秘話まで。(構成・徳瑠里香/写真・浜村達也)

「はい、喜んで」と妊産婦さんを受け入れる理由

坂本: 先生は今までどれくらい赤ちゃんを取り上げてきたんですか?

荻田: 僕はそんなに多くないですよ。3000人くらいですね。

坂本: いやいや、一つの街ができるくらいじゃないですか。

荻田: いやいや、1万人くらい取り上げている人もいますから。僕は不妊外来や研究をしていた期間があったので。自己最高で1日24時間に12人取り上げたこともありますが、丸2日間何もないこともあるんです。お産はスケジュール通りにはいきませんからね。

坂本: 私が通っていた病院は完全予約制で通院するのも最初チケットをとるみたいに予約時刻に電話をしました。先生たちもすごく忙しそうでしたね。

荻田: 東京の名だたる病院はそうかもしれませんね。うちは絶対に断らないですから。僕はもちろん、下のやつも電話を受けたら「はい、喜んで」と言うようにしています。

坂本: それが可能なのはどういうシステムなんですか?

荻田: 2008年頃に東京や奈良で妊産婦さんのたらい回し事件がおきましたよね。東京のような都市には周産期医療ができる大きな病院がたくさんあるんですよ。結局ね、狭い地域に高度医療の病院がたくさんあると、自分たちが受けなくても他の病院が受けるだろうと思ってしまうんですよね。でも僕らのような地方の病院はそれができないから、自分たちが受けなかったらその母子に命の危険があるかもしれない、と思うんです。

坂本: 物理的に、NICUのベッドが足りないときなどはどうするのですか?

荻田: ドラマ「コウノドリ」の第9話で、緊急搬送された赤ちゃんのために、少し回復してきた赤ちゃんを別の病院に移してベッドを譲ってもらうシーンがありましたよね。そういうケースもありますし、搬送用のベッドを取り出してきて、一旦そこに収容することもあります。

自分の病院で受診をしていない妊婦さんを受け入れることは安全を脅かすことにもなるんです。だから今NICUにいる赤ちゃんを守ることを考えると自分のところで受けたほうがいいのか、その時点では判断が難しい。ただ一時的にでも自分のところで受けないとダメだと思い詰めている病院も多いのが現状ですね。

次ページ 産科医を続けている理由
1 2 3 4 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事