貧困・格差
「ふとんで年を越したい…」
急増する「見えない貧困」、恐怖の年末年始がやってきた

〔PHOTO〕ふとんで年越しプロジェクト2015

文/大西連(NPO法人「もやい」理事長)

「このままだと年を越せないかもしれません……」

岸田さん(仮名)はそうつぶやくと、大きなため息をついてうつむいた。僕は彼にかける言葉を探しながら、なんともなしに通りを行き交う人々を眺めていた。駅に向かう人々の表情は師走のせわしさに追い立てられながらも、どこか明るく、喜びに満ちているようにも見える。

2014年12月30日。池袋。岸田さんは待ち合わせ時間ピッタリに駅前のコーヒーショップにあらわれた。数日前、Facebook経由で彼から「相談したい」との連絡が入り、この日、急遽会うことにしたのだ。

待ち合わせにあらわれた彼は、ダウンのコートにジーンズ。それにちょっとオシャレなショートブーツ。大きなボストンバッグを持ってはいるが、とても生活困窮している人には見えない。むしろ、隣のテーブルで談笑している男子大学生のほうがよっぽどみすぼらしく見えるくらいだ。

岸田さんは35歳。数ヵ月前まで中部地方の工場で派遣社員として働いていたが、雇止めにあい寮を出て上京。家族はすでに死別しており天涯孤独。寮を出たときには30万円ほどの貯金はあったが、無職で住所不定の状態ではアパートは借りられず、新宿や池袋のネットカフェに寝泊まりしながら仕事を探した。

幸運にも仕事は見つかったが、前回と同じく派遣の仕事で、データ入力の事務。週4日(時給1,000円ほど)で手取りは月約14万円。ただ、ネットカフェ生活はお金がかかる。ネカフェ代にコインシャワー、コインランドリーにコインロッカー、自炊もできないので食費もかさむ……。これだけでは足りないので、日雇いの仕事があればする。

それでも何とか生活はできていた。ところが、思わぬトラブルが彼を襲ったのだ。