観る前に知っておきたい!
「スター・ウォーズ」が起こした映画史上の奇跡

〔photo〕gettyimages

文/中川右介

映画の中にある「私の故郷」

私には故郷がない。

東京都下の住宅公団(現・UR都市機構)の団地で生まれ育ち、27歳までそこにいた。いまも母はそこに暮らしているので年に数回は訪れるが、故郷感覚はない。

通った小中学校はいまもそこに建っているが、私が教わった教職員はいない。子ども時代の友人たちもみんなこの団地を出て行っている。

商店街を歩いていも、知り合いは誰もいない。私に声をかけて「元気かい」と言ってくれる人はいない。顔を見て、なつかしいと思う人はいない。

団地そのものも建て替えられたので、昔と同じ景色すらない。だから、その団地を訪ねても、帰郷という感覚がまるでない。「懐かしい土地」「懐かしい人」を私は持たない。「故郷へ帰る」という感覚が分からないまま、55歳になった。

そして「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を見て、生まれて初めて、「帰郷」という感覚を抱いた。

* * *

1960年に生まれ、「スター・ウォーズ」に高校生で出会った私は、「スター・ウォーズ第一世代」だ。

この世代は幼少期にアトムとサンダーバードとウルトラマンと出会い、中学で宇宙戦艦ヤマトに出会い、そのあたりでアニメと卒業していなければ大学生でガンダムと出会い……という人生を歩んできた。

社会人となり結婚して、もうそういう世界からは離れている人のほうが多数派ではあるだろう。だが、私はその後もずっと、少なくとも「スター・ウォーズ」だけは毎回、初日あるいは先行オールナイトの初日に観に行っていた。

今回も18日18時半からの最初の上映を観て、翌日ももう一回観た。

そこには、知っている風景があった。いや、違う惑星なのだけど、既視感がある景色だ。

知っている顔がいた。彼らは確実に、私が最後に会ってから30年が過ぎていた。ドロイドたちも古くなっていたが、まだ動いていた。敵は、厳密には違う組織らしいが、まだ健在だ。よく聴いていた音楽も流れていた。全てが、懐かしい。

ハン・ソロが登場して最初に言うセリフは、「We’re home」。そう、この映画の世界こそが「私たちの故郷」なのだ。