銀座の若いホステスに「後藤新平って知ってる?」と訊いてみたら、日本の歴史教育のマズさがよく分かりました。
島地勝彦×黒鉄ヒロシ 【第4回】
島地 勝彦 プロフィール

黒鉄 後追いですが、日本史を俯瞰してみていきますと、たしかに信長は開拓者ですよ。光秀はやっぱり保守本流の人ですね。秀吉はジョーカーでしょうね。

お酒を、ください。ガソリンが切れそうです。

シマジ あっ、そうでした。話が面白いからつい忘れていました。これはたった18年間だけ稼働していた蒸留所のシングルモルトです。名前は「キンクレイス」といいまして、40年もので51度あります。

ヒノ どの地域のものですか?

シマジ ローランドです。このボトルはダンカンテイラーのものですが。では、一杯どうぞ。

黒鉄 うん、これも美味い。はじめて飲みましたが、コクもありますし、香り立ちがじつにすばらしい。

シマジ 今日、黒鉄さんにお訊きしようと思っていた質問を思い出しました。どうして近隣諸国とギスギスしているのに台湾の人たちだけはあんなに親日なんですか?

黒鉄 それは後藤新平の功績でしょうね。彼が総督になったとき、台湾はアヘン中毒者だらけだったんです。それを後藤は3年計画で治してみせた。やみくもに取り締まるのではなく、樟脳工場を誘致して、工業を興すことで自立させたわけです。

いつだったか銀座のホステスに若い台湾人の留学生がいましてね。わたしが「後藤新平って知ってる?」と訊いたら、彼女はニッコリ笑って「後藤先生!」って感極まったような声を出しました。いまでも台湾の人たちは後藤新平を恩人として敬っているんですよ。

一方、隣にいた日本人のホステスはキョトンとしていました。昭和通りを作ったのは東京市長の後藤新平だということも知らずに、その道を毎日タクシーに乗って通っている。それがいまの日本の歴史教育なんですよ。

シマジ 仰る通り、忌々しき問題です。

〈了〉

黒鉄ヒロシ (くろがね・ひろし) 1945年、高知県生まれ。本名は竹村弘(たけむら・ひろし)。武蔵野美術大学商業デザイン科中退。1968年、漫画ストーリーにて『山賊の唄が聞こえる』でデビュー。同年、週刊漫画サンデーにて『ひみこーッ』を連載。1972年よりビッグコミック、ビッグコミックオリジナルにて『赤兵衛』を連載開始。同作は以降2誌での同時掲載が続けられている。1997年、全集「マンガ日本の古典」の『葉隠』で第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。同年『新選組』で第43回文藝春秋漫画賞。翌1998年、『坂本龍馬』で第2回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞。2002年、『赤兵衛』で第47回小学館漫画賞審査委員特別賞。2004年、紫綬褒章受章。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)『バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)『お洒落極道』(小学館)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が好評発売中!

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