文学BAR
2015年12月23日(水)

コタツとミカンから小説を生み出す方法〜作家・片岡義男の創作の秘密

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1980年代に代表作『スローなブギにしてくれ』が映画化され、サーフィンやバイク、アメリカ文化についての著作で若者の圧倒的な支持を集めた片岡義男。2014年に作家生活40周年を迎え、絶版になっていた旧作が新装版で次々に復刊され、ボイジャーがなんと全著作の電子化プロジェクトを進めている。最新作『この冬の私はあの蜜柑だ』を手掛かりに、今なお精力的に小説を発表し続けている彼の創作の裏側に迫った。

タイトルが決まれば小説はもうできている

片岡義男さん/都内の喫茶店にて

『この冬の私はあの蜜柑だ』はセレクトショップ・BEAMSが発行する雑誌「IN THE CiTY」に連載された短篇をまとめた一冊です。街で出会い、別れてゆく男女の関わりを透徹した筆致で描いた物語が心に響きます。それぞれの短篇は、編集者からテーマを提示され、執筆されたものだとか。

テーマといっても主題ではなくディテールだね。物語のどこかにそれを入れることによって、全体に何らかの効果を及ぼすといいな、という感じ。

たとえば冒頭の作品では「Sea of Love」。同時にSummer、Beach、Loveなんていう単語も受け取った。それをぼくなりに翻訳して「愛は真夏の砂浜」というタイトルができたんだ。タイトルを考えるときは同時に物語も作っているから、タイトルが決まったらもう小説はほとんどできているといっていい。

―「愛は真夏の砂浜」は同級生だった30代の男女のやりとりを、高校時代の夏の思い出と重ねて描いています。二人をつなぐものとして「葡萄のアイスキャンディー」の存在が印象的です。

複数の人がいて、その関係が変わっていく。その変わり方こそが小説。そして人と人の間には「もの」がある。「もの」は必ず他者との関係の触媒になるんですよ。

―喫茶店で出会った作家の男と漫画家の女が番傘と蛇の目傘を交換する「蛇の目でお迎え」は、まさに傘が二人の関係を変えてきます。

人間関係の変化を促す「もの」が、次第に主役のようになっていくこともあるね。だから、どんなものを選ぶかも大事。

蛇の目傘は手が込んでいて、見ていてすごく面白いんだ。この短篇に出てくる蛇の目は、実際にぼくが30年ほど前に京都で買ったもの。本当にいい蛇の目だよ。

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