ブッダの教えは「ニートになれ」だった!? ほんとうの仏教は、こんなにヤバくて面白い

いま仏教本がアツい! 書店では関連書コーナーが賑わいをみせており、欧米でも盛り上がる「マインドフルネス」への関心もあって、ビジネスパーソン向けの仏教本も刊行されている。

そんな「ブーム」をさらに盛り上げている書き手がいる。現在ミャンマーに暮らしながら、仏教の教理と実践を学んでいる魚川祐司さんだ。

今年の春に上梓した初の著書『仏教思想のゼロポイント』(新潮社)は、高度な内容に踏み込んだ仏教書であるにもかかわらずスマッシュヒット。この若き著述家の登場は「日本仏教界を揺るがす大事件」とまで言われ、新聞各紙も取材する注目ぶりである。

そんな魚川さんの最新作『講義ライブ だから仏教は面白い!』が刊行された。仏教とりわけブッダという人が語ったことの核心を「ニート」「RPGのレベル上げ」「おっぱい」「イケメン」といった、強烈にわかりやすいたとえで語る入門書だ。今回は、とりわけ仏教書には厳しい批評眼を持つ宮崎哲弥さんが、本書に寄せた解説を特別公開する。

わかりやすく難しいことを説く

のっけから手前味噌っぽい話で申し訳ないが、かつて私の評論の姿勢について「わかりやすく難しいことを説く」と評されたことがある。「難しいことをわかりやすく説く」のではなく、「わかりやすく難しいことを説く」よう心懸けているという。

言い換えるならば「難しい事象を噛み砕いて説明しようとする」のではなく、「噛み砕いて、難しいことを問おうとする」のが私の論評の特徴だ、と指摘してくださったのだ。

まさにそれを目指している、と思わず膝を打った。と同時に、それを目指しながら、ついつい易きに付いて、難しいことを単に噛み砕き解説して済ましている己が現状に気付き、悄然としてしまった。

本書の原型に当たる『だから仏教は面白い!』の電子書籍版を一読したとき、まさに、わかりやすく難しいことが説かれているので驚嘆した。そして仏教は、少なくとも「ゴータマ・ブッダの仏教」はこの方法で説示されなければならないことを確信したのである。

宮崎哲弥さん新刊(呉智英さんと共著)『知的唯仏論』(新潮文庫)好評刊行中。巻末には魚川祐司さんの解説も掲載。

仏教は「善い人」を目指さない

はっきりいうが、仏教は難しい。とくに日本においては、下手に〝仏教色の文物〟が分厚く蓄積されているため、多くの人が仏教に慣れ親しんでいると思い込んでいる。

お寺の数もコンビニエンスストアより遥かに多いみたいだし、日常的に使う言葉が経典に由来するものだったりすることも珍しくない。その身近さゆえ、仏教の「難しさ」を認識すること自体が難しくなっているとしても過言ではない。

それにもう一つ問題なのは、世に「やさしい」仏教入門書が蔓延していることだ。それらは二重の意味で「やさしい」。わかりやすく、行き届いた解説が施されているという点で「易しい」し、世間の常識や通念や道徳に反さないことばかりが満載されていて、読んで耳心地がよい、という点で「優しい」。

もう少し学術的な風味を添加した感じの啓蒙書でも、ブッダの教えは「勇気をもって、人間として正しく生きていきましょう」に尽きる、などと断言されていたりする(橋爪大三郎、大澤真幸『ゆかいな仏教』サンガ新書)。嘘八百である。

仏教は、「正しく生きる」こととか「善く生きる」こととかを目的に据えたりはしていない。別段それらを否定するわけではないし、仏教の修行を積めば、(結果として)「正しい人」や「善い人」になったりはする。だが、目指してそうなるわけではない。