読書人の雑誌『本』
終わらない「対テロ戦争」の正体 〜「いま」を知れば「これから」がわかる
フランスの空母シャルル・ドゴールに艦載された戦闘機〔photo〕gettyimages

文/宮田律
(現代イスラム研究センター理事長)

「空爆」によってテロを抑制することはできない

2015年11月13日、フランス・パリで同時テロが発生し、130人余りが犠牲になった。事件から10日後の11月23日、フランスは地中海の空母シャルル・ドゴールから戦闘機を発進させ、シリア空爆を本格化させた。

しかし筆者は、空爆によってフランス国内、あるいはヨーロッパ域内のテロが抑制できるとは到底思えない。フランスなどヨーロッパで発生するテロの背後には、もっと大きな問題が横たわっているからだ。

もし本気でテロを抑制したいのならば、まずは異様に高い移民の失業率など、不均等な社会経済状態の改善から手を付けるべきだ。

というのも、パリ同時テロの首謀者たちが拠点を構えていたベルギーの首都ブリュッセル郊外のモレンビークは、西ヨーロッパのイメージからはほど遠く、発展から取り残されてしまっている地域だ。

1960年代から70年代にかけて北アフリカ、トルコ、中部アフリカなどから移民がやってきたモレンビークは、日雇い労働を行う彼らの居住地域となっている。学校も十分に備わらず、公共サービスは欠如し、警察機能も有効に機能していない。過激派にとっては潜伏しやすく、武器の入手も可能だ(なおモレンビークは、20年前まで社会主義者たちの活動拠点でもあった)。

ちなみにフランスの場合、2013年における非移民者の失業率が9.7%なのに対し、移民者のそれは17.3%と高い。ヨーロッパで起こるテロの背景として、「ムスリム移民たちの貧困」という経済的要因を、忘れてはならない。

「石油利権」と「軍産複合体の思惑」

中東で紛争が終わらない理由としては、「石油をめぐる欧米諸国や軍事関連企業の思惑」も大きい。

歴史をひも解けば1951年、イギリスがイランに所有していた石油施設を国有化したモハンマド・モサッデグ政権に対し、1953年、米国CIAとイギリスMI6が謀略を駆使してクーデターで打倒。結果、イランの石油利権に米国が絡むようになった。

この事件はイラン人の米国に対する反発を招き、1979年のイラン革命の遠因となった。そして、イラン革命によってイラン石油を獲得できなくなった米国はその後、イラク石油に関心を向けるようになった。

以来、米国が中東・北アフリカ地域における石油資源をいかに「重視」してきたかは、1976年以降、その確保のために7兆3,000億ドル(876兆円)もの巨額のカネを注ぎ込んだことにもあらわれている。