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虚勢を張る習近平が倒れる日
〜引き金になるのは「腐敗問題」だ

エズラ・ヴォーゲル教授が読み解く「中国の明日」
最近、経済不振から日本に擦り寄っている習近平主席〔PHOTO〕gettyimages

聞き手:橋爪大三郎

橋爪大三郎氏が聞き手になり、アメリカのアジア研究の権威・ヴォーゲル教授が、中国と鄧小平について語り明かす—そんな新書が話題を呼んでいる。習近平と中国の近未来を教授が予言する。

なぜ中国は崩壊しないか

20世紀、ソ連、東欧、中国、いくつかの国で社会主義が試みられて、冷戦が終わったあと、ほとんどすべてなくなってしまいました。中国はなぜ、ポスト冷戦の時代に、解体しなかったんでしょうか。

ヴォーゲル それは、ひとつには、経済成長がものすごく速かったからですね。'80年代に、みんな生活がよくなった。

もうひとつは、阿片戦争以来、この国を統一するのがむずかしいとわかっていること。政治が乱れ国が分裂している状態では、ダメだと、誰もが骨身にしみてわかっている。多くの人びとがこのふたつを認めているから、中国共産党が支持されているのだと思うんです。

中国の改革開放はいまのところ、政治権力の統一によって、経済の発展を推し進めるというパターンです。韓国や台湾はある段階で民主化しましたが、中国の場合、民主化しそうにない。

ヴォーゲル この点をめぐっては、いろんな考え方があります。

われわれ西洋人が前に考えたことは、まず、産業の発展をはかり、経済成長を進める。すると、民主主義の国になり、独裁的なやり方をやめる。

中国はいままでのところ、そうなっていませんね。どうしてかと言うと、ひとつは国が大きい。統治するのは大変なので、権力が民主化して統制がとれなくなることを、人々が恐れている。

もうひとつは、指導者がなかなかの手腕を持っているので、人びとの信頼をえている。

けれども将来は、もっと民主主義の国になる可能性が大きいと、私は思います。

日本は、高度成長から低成長時代に入って、全社会が平等化した。教育水準が高いし、医療制度も充実している。

中国は、そういう条件をまだ、持っていない。今後、高度成長から低成長の時代に入ると、むずかしい問題がいっぱい出ると思うんですね。

私の目から見ると、いまの習近平はかなり、必死になっている。必死になっているので、自分は強いぞと、虚勢を張っている。心のなかは、いろいろ心配も多い。

中国のチャレンジについて、うかがいましょう。まず、経済発展が、まだ一部に偏っているので、国全体にそれを押し広げなければならない、というのがあります。二番目に、社会保障や社会インフラの整備に、相当の投資が必要です。

ヴォーゲル その二つよりももっとむずかしい問題は、腐敗だと思います。

国民は、腐敗をやめろ、腐敗をすぐ何とかしてほしい、と思っている。ところが、腐敗を根絶しようにも、腐敗の根はあまりに深い。

指導者はいま、みんな心配しているんですね。自分もひっかかるんじゃないかと。海外へ行こうか、どこに財産を隠そうかと、気が気でない。

そういう心配があまり強くなると、習近平に対して、反感を持つ可能性がある。習近平政権も、それを恐れなければならない。しかし国民の手前、腐敗問題に手をつけて成果をあげないわけにいかない。

このバランスが崩れると、深刻な政治闘争を引き起こし、政治が乱れてしまうという心配があるのです。

それが、いま直面している一番危険なことだと、私はみています。

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