「ブラックマネー」をノーリスクで受け取る政治家たち~辺野古移設献金問題から読み解く企業献金の危うさ

佐藤優が斬る!
〔PHOTO〕gettyimages

本記事は文化放送「くにまる・ジャパン」(2015年12月4日)での佐藤優さんの発言をテキスト化し、メルマガに載せた内容を一部抜粋して掲載しています。

今回は朝日新聞の一面で報道された「辺野古受注業者が沖縄6議員に寄付」というニュースを佐藤優さんが独自の視点で深読みしていきます。

* * *

西川: 「昨年の衆議院選挙前 辺野古受注業者が沖縄の6議員に寄付」

12月4日の朝日新聞の1面からです。アメリカ軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を受注した業者が、2014年の衆議院選挙の前に、当選した6人に合計90万円を寄付していたことが分かりました。国と契約を結ぶ業者からの国政選挙に関する寄付は、公職選挙法で禁止されており、寄付を受けた6人のうち、5人は「受注業者と知らなかった」として返金し、1人も返金を含めて検討(※12月4日時点)しています。

邦丸: ちなみに6人のうち、4人が自民党、1人が大阪維新の会、もう1人は生活の党の国会議員です。額としてはあまり大きくはありませんが、佐藤さん、いかがですか?

佐藤: 与野党双方に配っているということですよね。しかも、生活の党の人は、この建設業者が自分の選挙区の人です。ということは、まんべんなく配っている。即ち、どっちにひっくり返るかわからないと考えているというワケです。自民一本でだけということではなくて、他にもに保険をかけておこうというときに、仲良くしてくれそうな人におカネを出しておくということが露見したんですね。

「受注業者と知らなかった」と言いますが、本当ですか? 本当ですか?と言いたいです。

邦丸: そうですよね。

佐藤: こういったところに深刻な問題があります。私は企業献金はやめたほうがいいと思っています。この建設業者がオーナー会社なのか、株式を公開している会社なのかわかりませんが、企業献金について、株式を公開している会社のケースを考えてみましょう。

仮に、無私の気持ちで、推したい政治家に政治献金をした場合、株主との関係はどうなりますか?これは背任ですよね。株主との関係においては、無私の気持ちでカネを使われては困るわけで、その分は配当や企業の経営に向けるべきですよね。

逆に、「先生、ウチにぜひ仕事をやらせてほしい」ということで献金した場合は、会社の利益には適いますが、贈賄になりますよね。要するに、企業の政治献金というのは、贈賄または背任の可能性があるという、ものすごく危ない線を走っていることになります。

ですから、これはやはり一律禁止にして、献金をする場合は企業の社長が自分のポケットマネーから出せばいいんですよ。個人の場合でも税の控除がありますから。150万円を上限とした個人献金に切り替えるべきじゃないかと思います。企業献金というのは、本質的にやましいものだと思います。

邦丸: 朝日新聞の記事をよく読んでみると、最後の部分に、今回献金をした企業が過去、自民党の沖縄振興策で、蛇口がだいぶ緩みおカネが落ちるはずだったのが、蛇口を閉められたときに2つの業者が倒産した。国というのは怖いんだ、だから国とのパイプ役として議員を使いたいんだということを吐露しているんですけれど。

佐藤: ああ、これはもう、まったくやり方を間違えています。国とのパイプにはなっていないですから。

邦丸: 議員さんそのものがパイプになってない?

佐藤: 議員のなかには、パイプになっているように見せかける不届き者がいるかもしれませんが、実際問題、パイプにはなれません。今は危なくて、そんなことはできない。それを、私は永田町でよく見ていますから。

業界のみなさんはときどき、勘違いしています。たとえば、今回もらっているのは90万円で平均すると一人当たり15万円です。それで政治家が手を回して、東京地検特捜部にパクられて、裁判を抱えて議席を失って、刑務所に突っ込まれるなんていうリスクは絶対に冒さない。

だから今、気をつけなければいけないのは、逆のことなんです。口は利かない。ジャマをするんです。

邦丸: あ、そうか、そうか。便宜を図ることはしないけれど、誰かがやろうとしていることをジャマする。

佐藤: そう。東北のほうの、この前まで非常に有力だった或る人は、まさにそういうことを狙われたわけでしょ。それは、どちらかというと公正入札妨害とか、偽計業務妨害とかになるわけですね。しかし、贈収賄ではない。

そうなると、安全保障というか、みかじめ料として「ジャマしないでください」ということで少額を払う。今はむしろ、有力な政治家にはこちらのほうが多いと思いますよ。

邦丸: なるほどなあ。

佐藤: だから、入札のところで触るなんていうことは、国政レベルの政治家であれば考えられない。だから、こういったところにおカネを出せば仕事につながると考えるのは、永田町のことを知らな過ぎます。でも、出してくれる分には結構だということで、自分にはそういう口利きができるというような雰囲気を醸し出している政治家はいるかもしれない。

昔、裏口入学詐欺というのがありましたよね。要するに、「裏口入学できるように口利きしてやる」と言ってカネを出させて、合格したらそのままカネをもらって、合格できなかったら「力が及ばなかった」と言ってカネを返す。ノーリスクでカネをもらえる。これに限りなく近いですよ。

邦丸: ははあ、裏口入学のために動いてはいないんですよね。それなのに、受かったらガメちゃう。

佐藤: そう。落ちたら、「一生懸命働きかけたんですけれど、力及びませんでした」と言う。でも、それで訴える人なんかいませんよ。そもそも不正な働きかけなんだから。これに限りなく近いですよね。期待してカネを出したって、政治家は何もやってくれないですよ。ですから、建設業者のみなさんでこの放送を聴いている方がいたら、そういうおカネを出すのはムダですから、やめたほうがいいですよ。

佐藤優「インテリジェンスの教室」Vol.073(2015年11月25日配信)より

メルマガのお申込みはこちら

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」は著者とのつながりを体感できるメルマガです

「インテリジェンスの専門家」である佐藤優氏がプロだからこそ読み取れる行間のシグナルをもとに、各国のディープな情報を「分析メモ」として提供。既存の媒体では読めない的確で深みのある分析を展開しています。
ほか、いま読むべき本や本の読み方を指南する「読書ノート」、佐藤優氏が読者からの質問すべてに答える「質疑応答」、文化放送「くにまる・ジャパン」の発言を収録。 本メルマガで佐藤優さんとつながる実感をぜひご体験ください!


* * *

参加者には旧日本陸軍の戦術指南書「作戦要務令」を配布! 旧日本陸軍が作成した一般将校(いわば中間管理職)のための戦術指南書。いま日本のビジネスパーソンが読むべきこのテキストを、佐藤優氏が丁寧に解説します。

佐藤優「社会人のための使える教養」講談社早朝講座 受付中!

新自由主義的な風潮が強まるなか、ビジネスパーソンが会社の内外を生き抜くためには、実践と教養を兼ね備えた、新しいかたちの総合知が必要です。「知の巨人」佐藤優氏が、ビジネスパーソンが実社会を生きていくために欠かせない武器を伝授する、まさに「朝活」の決定版ともいえる講座です。

【開催日程】
・午前7:00~8:30分(開場 6:30) 全5回
  第1回:2016年 1月12日(火)
  第2回:2016年 1月19日(火)
  第3回:2016年 2月 9日(火)
  第4回:2016年 2月16日(火)
  第5回:2016年 3月 8日(火)
・開催場所:フクラシア東京ステーション
・定  員:80名(先着順)
・受 講 料:5万円(全5回)
・お問い合わせ:講談社早朝講座係 講談社(現代新書内 03-5395-3521) まで

詳細・お申込みはこちら