雑誌 ドクターZ
低失業率でも景気回復しない「本当の原因」
〜エコノミストの9割が「消費増税の影響はない」と言っていたのに……

〔PHOTO〕gettyimages

11月27日、10月の完全失業率が発表され、3.1%と、20年3ヵ月ぶりの低水準だったことが明らかになった。

ただ一方で、10月の実質消費支出は前年比2.4%減で、2ヵ月連続のマイナス。失業率が回復したならば、景気がよくなり、消費もまた増えるはず。それなのになぜ、2つの統計は正反対の方向に動いているのか。「統計の取り方が間違っている」との指摘もあるが、本当だろうか。

経済指標には、先行指数、一致指数、遅行指数の3つのタイプがある。

先行指数は、株価や機械受注などのように景気に先んじて動く経済指標である。一致指数は、鉱工業生産指数、出荷指数、商業販売など景気と同時進行で変動する経済指標だ。遅行指数は、税収、雇用のように景気に遅れて動き出す経済指標。税収は企業が決算を締めた後でないと徴収できず、雇用も企業の営業状況に応じて決まるからだ。

では、当該の2つの統計は3つのタイプのうち、どれに当てはまるか。
消費支出は、ものによって先行、一致、遅行のいろいろがあり得るが、どちらかと言えば一致に近い。失業率は典型的な遅行である。

つまり、失業率が良好といっても、「過去に景気がよかった証拠」に過ぎず、現在の状況を表しているとは限らない。

一方の消費は一致指数に近いので、現在の消費が良くないということは、景気が悪くなる兆候と言えるだろう。

いま、消費が悪いのは、'14年4月からの消費増税の悪影響である。消費支出(前年同月比)を分析すると、'14年3月までは平均2%程度の安定した伸びを示していた。ところが、'14年4月の消費増税後、急激に消費が落ち込み、マイナス6%程度にまで転落。徐々に回復しているが、消費増税前の水準に戻るのは、来年3月頃の公算が大きい。つまり、消費増税の悪影響は2年も続くわけだ。

3兆円の補正予算も焼け石に水

消費増税の影響をエコノミストに聞けば、その人の力量がわかる。

9割近いエコノミストは、'14年4月に「消費増税の影響はない」と言った。その人たちは自らの失態を糊塗するために、消費増税の悪影響の話はしない。酷い人になると、いまでも消費増税の影響はなく、天候不順などの別の要因で消費が低迷したというウソを平気でつく。このため、消費低迷が消費増税のせいであることを忘れてしまっている。そして、「統計の取り方がおかしい」などと主張するのだ。

挙げ句の果てに、麻生太郎財務相まで、彼らに便乗して、「消費支出の家計調査がおかしい」と言い出している。これは、明らかな消費増税の影響隠しだ。

消費増税前後で、統計の取り方は同じである。それでも、増税後に数字は急落している。これこそが消費増税の悪影響の証左だ。この悪影響が消費だけでなく、投資にも広がり、景気全体が悪くなれば、次は雇用が悪化し、失業率も高くなるだろう。

2四半期連続でGDPがマイナス成長というのは、景気全体が悪くなりかけている証だ。年明けに補正予算が打たれるが、3兆円では焼け石に水だろう。その10倍の30兆円が必要になるとの試算もある。

『週刊現代』2015年12月19日号より

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