メディア・マスコミ
「関係者によると」の関係者とは誰なのか? 村上世彰氏「相場操縦」報道にみるメディアのリーク依存体質
村上世彰氏。写真は2006年当時の記者会見の模様 〔PHOTO〕gettyimages

今も横行する「関係者によると」報道

旧村上ファンドを率いて「物言う株主」として知られた村上世彰氏が相場操縦の疑いで11月25日、証券取引等監視委員会の強制調査を受けた。すると、主要紙は申し合わせたように「関係者によると」報道を始めた。

11月26日付夕刊を見ると、毎日、日経、産経の3紙は「関係者によると」、朝日は「関係者への取材でわかった」、読売は「関係者の話でわかった」と書いている。翌日以降も情報の出所については各紙とも同じ対応を続けた。

関係者とは誰なのか。各紙とも紙面上でまったく説明していない。こうなると、一般の読者は「記者が監視委側と村上氏側の双方も含め多角的に取材した結果」と想像してしまうのではないか。

そのうえ各紙とも"推定有罪"的報道をしていた。産経は見出しで「監視委、刑事告発も視野」と伝えていた。結果として、単に当局が疑いを抱いている段階にすぎないのに「村上氏=犯罪人」というイメージが読者の間でつくられたとしてもおかしくない。後で触れるが、日本では新聞社の事件報道が推定有罪的になるのは日常茶飯事だ。

私が村上氏本人に確認してみたところ、村上氏側は主要紙からの取材に一切応じていなかった。だとすれば「関係者」とは監視委側のことであり、主要紙はもっぱら当局側からのリークに基づいて報道していたことになる。

それを裏付けるかのように、12月4日に村上氏は「相場操縦に関する報道の件について」と題したプレスリリースを発表し、「関係者によると」報道の推定有罪的な内容を全面的に否定している。主要各紙の報道が多角的な取材の結果であったとすれば、同氏の主張が報道内容とこれほど食い違うはずがない。

村上氏はプレスリリースの中で「相場操縦を行い不当な利益を得た」という報道のほか、「他人名義の複数口座を使う借名取引によって、空売りで大量の売買を行いながら、株価を不正に下げ、利益をあげた」という報道を取り上げ、理由を挙げながら否定している。同氏にしてみれば偏向報道だということなのだろう。

では、各紙はどのように報道すれば良かったのか?

少なくとも「監視委関係者によると」と書くべきだった。監視委からリークしてもらいにくくなり、取材競争で不利に立たされかねない懸念もあるが、重要なのは公正な報道である。そもそも、いずれ発表になるニュースを他社より早く報じたところで、読者にとっては何の意味もない。

さらに付け加えれば、「村上氏側に取材を申し込んだが、断られた」とも記事中で書くのが本来の姿だ。こうすることで、読者に対して記事は村上氏側の主張を盛り込んでおらず、監視委に都合の良い情報で構成されているとはっきりと警告できる。

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