坂本龍馬の死因は「礼儀作法」だった!? ~漫画家・黒鉄ヒロシの”覗き見趣味”を覗き見る
島地勝彦×黒鉄ヒロシ 【第1回】

撮影:立木義浩

<店主前曰>

黒鉄ヒロシさんとわたしは昔から銀座でよく会う飲み仲間であった。

ある夜、黒鉄さんが吉行淳之介先生と飲んでいたとき、わたしは少し離れたテーブルに柴田錬三郎先生と一緒にいた。吉行先生とシバレン先生は大の仲良しで、お互いを「錬さん」「吉行」と呼んでいた。懐かしい、われらが20代のころの話である。

月日は流れ、黒鉄さんは70歳になり、わたしも74歳になった。

ある日、サロン・ド・シマジの本店に入るなり、黒鉄さんは開口一番こう叫んだものである。

「この部屋の雰囲気はぼくの寝室によく似ています! そっくりといっていいくらいです。ここはまさに自分だけの空間、ここに金も手間もかけて、好きなもの、大事なものでこしらえた“神殿”ですね。シマジさんの人生の軌跡というか、精神文化が凝縮されています」

そう、黒鉄さんもわたしも“一人遊び”が大好きな男なのである。

* * *

黒鉄 シマジさんは一人でいてどんなとき満ち足りた気持ちになりますか。

シマジ ほとんど毎日ここで原稿を書いているんですが、夜遅く、気持ちのいい文章が書けたあとの高揚感というか、達成感に浸りながら、葉巻に火をつけ、シングルモルトを1時間ほどかけてゆっくり愉しむときが、いちばん満ち足りた気分になりますね。

黒鉄 大人と子供の決定的な違いは、そういった“一人遊び”を何時間でも出来るかどうか、ではないでしょうか。

シマジ 同感ですね。一人の時間を愉しめてこそ、大人の男というものです。

立木 こんにちは。

黒鉄 あれ、立木さんじゃないの?

立木 オレですよ。もしもし、忘れたんですか?

黒鉄 忘れないけど、遠目にはもう全然、お互いにわからない(笑)。

立木 あなたは細かい手仕事ばっかりだから目が弱くなったんだね。おれもレンズを覗くときは目を細めるけど、こちらには有り難いことにオートフォーカス機能がある。それで保っているんだよ。おたくの業界にはオートフォーカスはないもんね。