あなたは原節子さんの訃報にピンと来ましたか? 視聴者ターゲットを絞れないTVニュースの限界
TVでは大騒ぎ、ネットでは無関心
 右:昭和の大女優・原節子さん(映画『東京物語』より) 〔PHOTO〕gettyimages

ニュースやワイドショーはターゲットを絞れない

テレビでニュースを伝えることが、難しくなる一方である気がしてならない。存在が伝説化していた大女優・原節子さん(没年95歳)の訃報に接し、あらためてそう思った。

原さんは終戦10年前の1935年に映画界入り。大女優と呼ばれたが、東京五輪の2年前の62年に突如として引退。その後、人前に姿を表さなくなったため、伝説の人となった。

「大女優」かつ「伝説」なので当然、その死は大々的に報じられた。新聞は大見出しを掲げ、ほとんどのニュースとワイドショーが長い時間を割いた。

そんな中、筆者の周囲で話題になったのは川本三郎さん(71)の談話記事だった。川本さんは作家だが、映画評論家としても名高く、希代の時代観察者でもある。

「私は世代が違うので、伝説化された後に名画座などで作品を見た世代だが、戦前も戦後もスターだったことで、同時代の日本人の悲しみを背負えた女優だったと言える (以下略)」(毎日新聞11月26日付夕刊)

71歳の川本さんですら、原さんの存在は「世代が違う」のだ。その作品群を封切り時に観たのは80代以上の人たちだろう。原さんと同時代を生きた人の年代も同じ。それを考えると、テレビの大報道にピンと来なかった人は少なくないのではないか。

誤解してほしくないが、原さんの死の大報道は当然だと思う。間違っているとは微塵も思わない。とはいえ、約1億2600万人の人口のうち、いまや平成生まれが3000万人を突破している。全世代に向けて放送されるテレビのニュースが、すべての年齢層に理解されるとは思えない。それをあらためて感じたのが、原さんの訃報だった。

新聞の場合、読者は関心の薄いニュースを読み飛ばせば良い。雑誌は最初から読者層の関心に合わせて作られている。読者側も初めから好みの雑誌を選んで買う。ところが、テレビのニュースやワイドショーは視聴者層を定められない。視聴者側はチャンネルを替えてしまえば済むが、それでは番組側が困る。やはりテレビがニュースを伝えるのは難しい時代なのだと思う。