国際・外交 テロ
ロシアとトルコは「全面戦争」に突入するのか? 世界の列強が「対テロ戦後」を睨んで動き始めた!
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なぜトルコはロシア軍機を撃墜したのか

シリアとトルコの国境付近でトルコ軍機がロシア軍機を撃墜した。私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46454)で「世界は『テロと戦争の時代』に完全にモードチェンジした」と書いたが、まさに暴力が瞬く間に加速している。世界はどこに向かっていくのか。

トルコとロシアはつい最近まで友好的な関係にあった。トルコの輸入相手国第1位はロシアであり、とりわけ石油や天然ガスの多くはロシアからの輸入に依存している。ロシアはトルコとロシア産天然ガスを南欧に輸送するパイプライン建設の交渉も進めてきた。

これまでのように、両国が互いを必要とする相互依存関係を重視しているのであれば、たとえ一時的な領空侵犯があったとしても、いきなり相手を撃墜するような乱暴な事態は避けられたはずだ。北大西洋条約機構(NATO)のメンバー国が、よりによってロシア機を撃墜するような事態は何十年も起きなかった。

しかし撃墜に至ってしまったのは、相互依存の恩恵を忘れてしまうほど頭に血が上って、あっという間に双方で敵対意識が膨れ上がってしまったからだ。燃え盛る戦火は空軍パイロットからも民衆からも冷静さを奪ってしまう。代わって激情が支配するようになる。

ロシアがシリアの空爆を始めたのは、つい2カ月前の9月30日である。イスラム国(IS)掃討が目的と説明していたが、まもなくロシアはIS掃討よりもアサド政権の延命を狙って、政権に抗う反体制派勢力を攻撃している実態があきらかになる。

トルコは、同胞であるシリア内のトルクメン人が反体制派と目され空爆されていると知って、ロシアへの反感を募らせた。「仲間の敵は自分の敵」というロジックだ。

一方、アサド政権に肩入れするロシアの側も、トルコはトルクメン人を支援してアサド政権に敵対させているとみていた。こちらも「アサドの敵は自分の敵」である。「敵・味方関係」に基づく敵意が「相互依存関係」に基づく理性をおしのけ圧倒していった。その結果が今回の撃墜なのだ。