信長は最強の「フランチャイズ経営者」だった!〜戦国時代のベンチャーマインド②
コルクCEO・佐渡島庸平 × 作家・木下昌輝 『決戦! 本能寺』出版記念対談

織田信長のフランチャイズ経営

天下分け目の決戦を描く人気歴史小説シリーズの第3弾『決戦! 本能寺』が発売された。戦国時代を駆け抜けた武将が、歴史を変える決断を下したときの想いや苦悩が、人気作家たちの手によって描かれている。戦国武将はいわば、一つの「国」をマネジメントする経営者。ベンチャー企業「コルク」CEO・佐渡島庸平氏と、作家・木下昌輝氏が、「戦国武将と組織マネジメント」をテーマに、その魅力を語りつくす。

木下 戦国時代の武将と現代のベンチャー企業経営に類似点があると思うのですが、信長がやったことって、今で言えばフランチャイズ経営じゃないかって思うんですよ。明智光秀や羽柴秀吉らの家臣を、戦で奪った領地に送り込んで、「勝手に組織を作れ」と任せてしまうわけでしょ。

送り込まれた光秀も、本家筋の織田家から有能な人材を引き抜いてしまう。それで周りから批判されても、自分の組織を強くしようするわけです。秀吉の場合は、自分の親戚を子供の頃から英才教育して組織を強くしている。そういう人材育成や組織作りをそれぞれ工夫して、任されたフランチャイズを大きくする様子も現代と近いんです。

佐渡島 現地の統治方法について信長はなにも口出しをしないんですか?

木下 多少の干渉はありますが、あとはお前らの才覚で強い組織を仕上げろ、みたいな。ある意味放任ですが、それでいて「上納金」として名物は送るように、というのはきちんとやっている(笑)。

人をけしかけるのが上手いんですよ。戦功を上げたトップ何人だけしか茶会を開かせないというのもやっていて、心を操縦するのが上手いなと思いますね。

佐渡島 実は、信長のやったことで意外に語られないけど、すごいと思うのが茶会で、あれってお金やお米の他にもう一つ価値のあるものとして「茶器」というものを作り出したわけじゃないですか。投資対象の仕組みを作ったわけですよね。あれってすごくないですか。

木下 ある意味で茶器にブランドというか幻想的価値を与えたということですね。

佐渡島 それこそ茶器を領土と同等のように扱ったりするじゃないですか。あんな壮大な後の時代まで影響するような通貨の代わりになるものを作り出した帝王や覇者って、中国にもいないんじゃないかな。

しかも、それぞれの茶器のランクづけは信長本人じゃなくて千利休がやるから、最終的には実際の国土争いと共にバーチャル上での覇権争いが信長と千利休の間で起きるというのも面白いですよね。

木下 茶器と国が同価値ということは、北方領土と茶器を交換してくれ、って言うようなものですから、今の感覚から言えば、あり得ませんよね(笑)。虚像に対して価値をつけたという意味では、今で言うとAKBメンバーとの握手に大きな価値があるようにしてしまったプロデューサーの秋元康さんも似ていますね。

『決戦! 本能寺』
織田信長が殺された「本能寺の変」。戦国を揺るがした事件の裏にあった人間関係と思惑を葉室麟・冲方丁・伊東潤・宮本昌孝・天野純希・矢野隆・木下昌輝著 ら7人の作家が描く。定価:本体1,600円(税別)講談社刊