信長はもっとも優秀な「起業家」だった!~戦国時代のベンチャーマインド①
カヤック取締役CEO・柳澤大輔 × 作家・冲方丁 『決戦! 本能寺』出版記念対談
左:柳澤氏 右:冲方氏

信長は「地方都市の商店主」

天下分け目の決戦を描く人気歴史小説シリーズの第3弾『決戦! 本能寺』が発売された。戦国時代を駆け抜けた武将が、歴史を変える決断を下したときの想いや苦悩が、人気作家たちの手によって描かれている。戦国武将はいわば、一つの「国」をマネジメントする経営者。ベンチャー企業「面白法人カヤック」のCEO柳澤大輔氏と、作家・冲方丁氏が、「戦国武将と組織マネジメント」をテーマに、その魅力を語りつくす。

柳澤 織田信長は絶対君主的で冷徹な武将という印象があると思うんですが、すごく規律の厳しい組織だったんですか?

冲方 僕はそう思わないんです。成果主義が徹底していて、成果を出さない人間は容赦なく降格される一方、生まれ育ちで優遇することもない。その意味ではリベラルなんじゃないですか。

柳澤 彼は家臣をどうまとめていたんだろう。描いている夢のデカさですか。

冲方 信長はごく初期から「天下布武」と言っていた。地方都市の商店主が「俺は必ず上場する!」と言っているようなものです。

柳澤 現代だと、会社の時価総額を世界一にするぞ、と経営者大きな目標を揚げたりすることがありますが、戦国時代も俺が天下を取るぞ、と言い出す武将が何人もいて、それに優秀な武将が乗っかるという感じなんですかね。

冲方 信長がすごいのは、彼が抜きんでてくると周りが包囲連合になり、いわば信長vs.日本中の武将的な構図になるにも関わらず、ひたすら生き延びたことですね。

柳澤 信長を支援する武将に優秀な人がいたということですか?

冲方 信長が生き延びたのは最終的に強運です。最大のライバルだった武田信玄と上杉謙信が相次いで病死したことで、一気に天下に近づけた。

柳澤 そこは会社も同じで、生きているからこそ幸運も訪れる。創業当時ある銀行の頭取の方から「会社では何が一番大事かわかるか、とにかく続けることだ」と言われたことがあって。当時はその言葉の意味がよくわからなかったのですが、今はよくわかります(笑)。

冲方 生き延びた代表は家康ですが、彼も実は何度も死にかけている。関ヶ原の合戦でも殺されかけている。

柳澤 家康が75歳まで生きたのは手堅く生きただけじゃなくて、博打を打つ機会も何度もあったのでしょうか?

冲方 要所で博打は打っていますよ。ただ、読み切っている。その上での博打なんです。

柳澤 それも経営者も同じですね。博打というと表現が悪いですが、明暗を分ける大きな勝負というのはおそらく過去に何度かありますね。

冲方 上場企業になった今も?

柳澤 そうですね。上場企業になったら安定だけ追求すればいいわけじゃないとは思います。

冲方 まあ現代は経営に失敗しても一族郎党が皆殺しされることもありませんしね(笑)

『決戦! 本能寺』
織田信長が殺された「本能寺の変」。戦国を揺るがした事件の裏にあった人間関係と思惑を葉室麟・冲方丁・伊東潤・宮本昌孝・天野純希・矢野隆・木下昌輝著 ら7人の作家が描く。定価:本体1,600円(税別)講談社刊