だから『下町ロケット』は大ヒットした! ~歴代高視聴率ドラマから見えてくる、シンプルな勝因とは
TBS『下町ロケット』公式サイトより

面白ければ録画機器にも勝てる!

TBS『日曜劇場/下町ロケット』(午後9時)の視聴率が、前半の完結編だった15日放送分の第5話で20.1%に達した。 

池井戸潤氏(52)による同名小説を原作とした前半はWOWOWやTBSラジオでもドラマ化済みだが、22日から始まった後半の原作は新刊『下町ロケット2 ガウディ計画』(小学館)で、初のドラマ化。新鮮味が加味されることもあり、最終回までの視聴率が30%に届く可能性も感じさせる。なにしろ、面白い。

ネット時代になり、テレビの優位性は著しく低下したが、やはり面白いドラマは高視聴率を得る。それは90年代までと変わらない。失礼ながら、低視聴率ドラマは単純に、面白くないのだ。つまらないから、視聴者は他番組やネット、あるいはゲームに向かってしまう。

『下町ロケット』の高視聴率は、面白いドラマならば録画機器にも勝てることを証明した。これも昔と変わらない。視聴者に「用事を後回しにしてでも見たい」と思わせれば、録画せず放送時間帯に見てもらえる。逆に録画されてしまったら、それは個人の都合や他番組、ネット等に負けたことになる。

では、『下町ロケット』は、なぜ大成功したのか? それは脚本、配役、演出のすべてが秀逸であるのに加えて、時代が反映されているからに違いない。過去の例を眺めて見ても、時代に合っていないドラマは、幅広い支持が得られない。

たとえば、最終回で40%に達した『家政婦のミタ』(日テレ)も時代に合っていた。放送されたのは東日本大震災が起きてから約半年後の2011年10月から12月。多くの同胞の尊い命が失われてしまい、東北地方太平洋側の美しい沿岸部が損壊され、誰もが強い喪失感を味わった後だった。

あのドラマのテーマは「大切な人の死による強い喪失感」と「喪失感を乗り越えての再生」だった。愛する夫と子供を失った深い悲しみにより、人間性が破壊された主人公・三田灯(松嶋菜々子)が、やはり母親を失った阿須田家で家政婦として働くことによって、人間性を回復していった。そんな物語が、喪失感を抱いていた見る側を癒やし、感動させたのだろう。

『下町ロケット』が高視聴率を得ている今はどんな時代だろう。日本の繁栄に貢献してきたはずの大企業が次々と不祥事を起こしている。大掛かりな不正会計を行った東芝、免震ゴムの性能を偽った東洋ゴム、杭打ちデータを偽装した旭化成建材――。

見る側は実在する企業の不誠実ぶりにうんざりしているはずだ。「日本企業はどうしたのだ? 」という疑問を抱いている。だからこそ、余計に、「誠実」をモットーとする佃製作所の快進撃が痛快に映るのだろう。

ただし、佃製作所はドラマの世界にだけ存在する特殊な会社ではない。佃製作所の財産である「誠実」は、そもそも日本人のレゾンデートルなのだから。それが各企業共通の理念だったからこそ、戦後の日本は奇跡的な復興を成し遂げられた。佃製作所は日本人そのもの。だからこそ、見る側は身近に感じ、その奮闘劇に熱くなる。不祥事企業も昔から不誠実だったわけではないはずだ。

現代社会の問題点を突いた風刺劇でもある。たとえば、佃製作所を陥れようとしたナカシマ工業と同じく、本業より金儲けを優先させるような企業は確かに実在する。バブル期以降に増えた。だが、佃製作所にナカシマ工業が敗れたように、金儲け第一主義に陥った企業の成功例はまずない。社員も不幸になる。

各企業は佃製作所と同じマインドを持ち続けるべきなのだろう。それが原作者・池井戸氏のメッセージの一つである気がする。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら