読書人の雑誌『本』
殺し屋がたどり着いた真の「正義」とは?
~極限の中に生まれる新しい秩序と価値観

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正義とは何か

混沌とした時代である。

世界からは毎日のように内戦、テロ、無差別な空爆のニュースが届き、人の生命を憂う暇もない。

強者は弱者を支配し、それが当然のように奪い取る。弱者はただひたすらに現状に堪え、疑うことも知らない。もし真実に気付き、逃げたり戦おうとすれば、それはそれで人としての尊厳と命を失うことになる。

たとえ弱者同士であったとしても、助け合うとは限らない。人種が違うからといって、国が違うからといって、宗教が違うからといって差別する。奪い合い、傷付け合い、殺し合う。

日本も、同じだ。

強い者が弱い者から搾取するという意味においては、どこの発展途上国や独裁国家よりも巧妙だ。国が国民を守ってくれるなどというのは、ただの幻想にすぎない。この国では、法律は支配者の権利を保護するための都合のいいルールでしかない。

現代のこのような社会において、“正義”とは何なのかと思う。

この国では弱者が犯罪の犠牲となることは、すでに日常だ。法律や警察はただ犯罪の事後処理をするだけで、弱者を守ってはくれない。犠牲者を助けてもくれない。“正義”という言葉そのものが、死語になりつつあるのではないかとすら思えてくる。

だが、こんな世の中だからこそ人は“正義”を求める。

文学の世界にも、それがいえる。ひとつの小説の中で何が“正義”で、何が“悪”なのか。そのボーダーラインを曖昧にしてしまうと、ストーリーが説得力を持たなくなる。

最も簡単な解決方法は、警察官――刑事――を小説の主人公に据えることだ。