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これぞリアル『下町ロケット』だ!
大企業のイジメに負けなかった「町工場の物語」

世界のグーグル相手に戦った男もいる
大企業にも負けない技術力を持っている町工場は、数多くある(写真はイメージです)〔PHOTO〕gettyimages

阿部寛演じる町工場の社長が、巨大企業に立ち向かう姿が感動を呼んでいる。だが、大企業との戦いはドラマだけの話ではない。技術屋のプライドを守り続ける小さな町工場は、現実にも存在する。

膨大な注文、そして裏切り

北海道札幌市から東へ約100km。赤平市という小さな町にある植松電機は、主にマグネットの製造・販売を行う、従業員18名の町工場だ。

先代の父から実務を受け継ぎ、同社で専務を務める植松努氏が語る。

「『下町ロケット』、僕も毎週観ています。でも一般の方とは、感想が違うかもしれません。大企業から訴えられたり、理不尽な難題を突きつけられたり……。そんな主人公の姿を観ていると、『うちと同じだなあ』と思ってしまうんです。いまでこそ事業は順調ですが、ここまで来るには、苦労の連続でしたから」

植松電機が設立されたのは、'62年。その後、地道に事業を続け、'90年代には実用的なバッテリー式マグネットシステムの開発にも成功した。

だが、そこから苦難の時が始まったと、植松氏は言う。

「工事現場で鉄板を運ぶ際に使うマグネットシステムの独自開発に成功しました。すると、ある大手企業が、興味を示してくれたんです」

声をかけてきたのは、トラック搭載型クレーンのシェア50%を占め、全国に500ヵ所の営業所を持つ、植松電機とは比べ物にならない大企業。その担当者から、植松氏はこう伝えられたという。

「『開発したマグネットをぜひ我が社で独占販売させていただきたい』と言われ、実際にとてつもない数の注文書を出してきた。事業拡大のチャンスですから、快諾しましたよ。

ただ、その膨大な注文に応えるのは、僕と父さんの二人だけではとても無理。そこで、注文書をもとに銀行から融資を受け、工場を二棟建設し、本社も新築、従業員もどんどん増やしていきました」

だがその翌年、事態は急変する。

「社長が交代したので、方針が変わりました。もう植松電機のマグネットは不要です」

担当者から、そう宣告されたのだ。