見えない日本の「貧困家庭」~子どもたちへの「負の連鎖」をどう断ち切るか安倍昭恵×黒沢一樹(第3回)

2015年11月23日(月)
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貧困や虐待を経験した自分だからできること

黒沢: 僕もそれまで生きる理由がわかりませんでした。活動を通じて、たとえば僕が学校に呼ばれて行ったりすると、生徒からこっそり「実は親から虐待を受けているんです」とか「母親がいつも違う男を連れてきて困っているんです」という相談を受けたりします。

他の大人には言えない事情を抱えている子たちが学校現場にはたくさんいたんですよ。先生に言えないし親にも言えない、そんな事情を抱えている子たちが。

僕ができることであり、誰かがやらなければいけない、やれる人が少ない、その対象となるのは、貧困層や一人親、定時制高校の子供たちの置かれている現状と向き合うことだ、ということが見えてきたんですね。

最初から定時制高校に活動対象を絞っていたわけではないんですが、定時制高校のほうがそういう子供たちに出会える可能性が高いんです。

学校現場に行ってみたら、先生は疲弊しているし、やる気がなかったりする。みんな、外部講師として定時制高校に行くと心が折れて帰ってくるんです。まず話を聞いてくれなくて、立ち話をしていたり、スマホをいじったりしているんですね。何かを教えようと思って外部からその中へ入っていくと、そもそも話を聞いてもらえないんです。

でも僕はその子たちに何かを「教える」という立場では接していないんです。僕自身が教えられるのはイヤだし、教えられることもないし、だから感じてもらえればいいや、というスタンスです。だから僕が行くとみんなちゃんと席に座ってくれて、とくに反応はないんですが、なぜか顔がちゃんと上がっているんですよ。

僕たちは「定時制高校の専門家だ」とひたすら言い続けてきました。そこから、今掲げているような意味づけとか理念なんて後付けというか、何となくこうだなという感覚の中からスタートしているんです。

今東京都の教育プログラムにも入れてもらっているのですが、先生たちから「絶対やってもらわないと困る」と言っていただけているからなんですね。

安倍: 貧困層の子供たちにとっては希望の星ですよね。「僕たちでもこうなれるかもしれない」と。「自分たちよりもっと悲惨な目に遭っている人が、ここまでになれるんだから」という感じなんでしょうね。

見えない子どもたちの貧困

黒沢: 彼ら彼女らはちゃんと大人に触れていないんですよ。学校の先生か親くらいで、下手をすると親も家に帰って来なかったりするわけです。どんな大人と話をしているかといえば、コンビニの店員くらいです。

食事の用意をしてもらえないから、お金だけ渡されて、食べ物を買いにコンビニへ行かないといけないわけです。そういう子たちがたくさんいる。彼らは1日380円の給食費すら払えなかったりします。

安倍: なんでこの日本で貧困層がそんなに増えちゃったんでしょうね。

黒沢: 難しい話はよくわからないんですけど、そうみたいですね。

安倍: たしかに日本にはストリートチルドレンはいないわけだけど、貧困家庭の子供はたくさんいるわけじゃないですか。なんでそこに目を向けないんですか、というふうによく私は言われるんですけど、児童養護施設の子供たちとは触れ合った経験はあっても、どこに行けばそういう子供たちと会えるのかというのがよくわからないんですよ。だから、一般の人たちは「日本には貧困なんかないですよ」って思っちゃうんですよね。

黒沢: そうなんですよね。僕が生い立ちの話をすると「それはフィクションですか?」と言われます(笑)。

貧困が見えてこない理由の一つは、まず貧困層の人たち自身が貧困だと認めたくないというのがあると思います。自分が不幸だと思うことに、どこかで引っかかりがあるんでしょうね。

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