報告書入手!老人ホーム連続転落死はこうして殺人ではなく「事故」で片づけられた
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警察も行政も業者も、何もやらなかった

やるべき事をやらなかった「不作為」は、責められてしかるべきだが、やるべき事をあえてやらない「不作為の作為」は、もっと悪質で罪が重い。

神奈川県川崎市で発生した老人ホーム連続転落死事件の「事故報告書」を入手した。何度も読むうちにつくづく感じたのは、この事件は、警察も行政も業者も、「おかしい」と思いつつも、結局は何事もなさなかったという意味で、「不作為の作為」がもたらしたのではあるまいか、ということだった。

転落事件の現場は、ジャスダックに上場するメッセージ(岡山市)傘下の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」である。昨年11月から12月にかけて、立て続けに起きたこの事件は、今年9月に入って各メディアで大きく報じられた。

「Sアミーユ川崎幸町」が川崎市に提出した「事故報告書」をもとに、再度、振り返ってみよう。

最初の転落死は11月4日である。

要介護度「3」と認定された85歳の男性で、4階の401号室に入居していた。「3」は、「立ち上がりなどが自分でできずに歩行も困難。食事や排泄や入浴に介助が必要」な状況で、「1」から「5」に分類される要介護認定の真ん中である。

事故報告書に次のように書かれているが、「死亡」を類型的に処理している事例なので、「黒塗り」部分を除いて全文を記したい。

筆者が入手した報告書

「1:40分頃、介護スタッフが、目配り援助の為、訪室したところ、ベランダの窓が空いており、カーテンも空いている状態で、ご本人様は居室にいらっしゃらない様子。館内を捜索したがご本人様が見当たらない為、他スタッフに内線にて状況報告し、転落の可能性を考え、○×様の居室ベランダから直下1階裏庭確認。

人らしき姿を発見したため、スタッフ2名で1階裏庭に行き確認。左側臥位で倒れられている○×様を発見する。発見時に出血は認められなかったものの、呼びかけ、○△を確認」

直後、管理者に連絡、救急車を要請。2:00には救急車が到着。3:10分に病院に到着したものの死亡が確認された。警察による現場検証の結果、「事故による転落が原因」とされたという。