だからテレビの「やらせ」はなくならない
~内輪の倫理組織「BPO」の矛盾と限界

BPOの組織図。大きく3つの委員会から構成される

BPOによる政府批判は理解できない

NHK『クローズアップ現代』のやらせ疑惑に端を発し、BPO(放送倫理・番組向上機構)が今月6日に自民党と総務省を批判した。その直後に自民党もBPOに反論。両者は真っ向から対立している。

まず、昨年5月の『クロ現』の問題報道について、自民党の情報通信戦略調査会は今年4月、NHKを事情聴取した。その行為をBPOは「政権党による圧力そのもの」と厳しく批判した。その通りに違いない。自民党も含めた一政党に特定のメディアを事情聴取する権限など与えられていないのだから。

自民党議員たちは今年6月には、会合で「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」などとも発言している。すべては政権与党の奢りだ。最近の自民党のメディア・コントロールの姿勢は目にあまる。たぶん、二度と野党に転落せず、思い通りの政策実現を図りたいためだろう。

一方、BPOは総務省側に対しても「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」と批判を浴びせた。このBPOの考え方は理解に苦しむ。放送界の監督官庁は総務省にほかならないのだから。

もしも総務省が政治色のある番組について介入していたのなら大問題だが、今回の『クロ現』が報じたのは詐欺事件。政治色は一切なかった。その上、誰の目にも真っ当な報道とは言えない代物。総務省が黙らなくてはならないとすれば、誰も指導できないことになってしまう。

高市早苗総務相(54)は「行政指導は放送法を所管する立場から必要な対応」と説明した。その通りに違いない。

菅義偉官房長官(66)も「行政指導は(『クロ現』に)放送法に抵触する点が認められたことから、放送法を所管する立場から必要な対応を行った」と語った。これも理にかなっている。放送法は件の『クロ現』のような、事実を曲げた放送を禁じているのだから。

メディア法の大家である立教大学名誉教授の服部孝章氏もBPOの声明には疑問を呈している。

「(政治の圧力を批判するのであるなら) 昨年11月に自民党が衆院選を前に在京テレビ局各局に『公正中立』を求める要望書を出した時点で、BPOとして声明を出すべきだった」(毎日新聞11月7日付朝刊)

やらせと報道・表現の自由は別問題なのである。また、自民党と総務省の立場も違う。

11月14日付産経新聞朝刊によると、BPOには視聴者からも批判が寄せられている。約80件の意見が視聴者から寄せられたが、多くが「(意見書で総務相や自民党を批判したことは)けしからん」との内容だったという。やはり今回の件での政府批判は理解が得にくいのだろう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら