次なる「民族大虐殺」への階段を、我々はいま上っている〜よみがえるホロコーストの悪夢
環境パニックが生存圏確保へ「あの国」を動かす
〔photo〕iStock


文/ティモシー D. スナイダー
(イェール大学教授)

次のヒトラーが生まれるかもしれない

アインザッツグルッペ()の司令官は発砲する前に、ユダヤ人の子供を高々と抱き上げこう言った。

「お前は、我々が生きるために死ななければならない」

殺戮が進行する中、他のドイツ人たちも、同じようにユダヤ人の子供の殺害を正当化した。「彼らか、我々か」という選択だ。

今日「ナチスの最終的解決(大虐殺)」は、忌まわしい目的で高度な科学技術が使われた最たる例だと考えられている。しかし実際のところ、それは資源を巡る戦いの中で起きた、至近距離からの人間殺戮だったと言える。

ユダヤ人がドイツ人によって殺戮された第二次世界大戦は、ヒトラーが、ドイツが生き延び生活水準を維持してゆくには、より多くの土地と食糧が必要だと考えたために起きたものだ。そして彼は、ユダヤ人と彼らの見解は自分の暴力的な拡大計画を脅かすものだと考えたのだ。

ホロコースト(民族大虐殺)は、我々がすでに教訓を学び取った、遠い昔に起きた恐怖の出来事のように見えるかもしれない。しかし悲しいかな、現代の我々が抱く不安は、再び身代わりの犠牲者や仮想の敵を生み出しかねない。

そして、今日の環境がもたらすストレスは、ヒトラーの考え方の新しいバリエーションの出現を促進しかねない。増加を続ける人口を食べさせることや、上昇する生活水準を維持することに不安を抱く国においては、特にそうした懸念がある。

※ ナチスドイツ軍が、前線の後方で「敵性分子」(特にユダヤ人)を銃殺もしくはガス殺するために組織した部隊