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芸能界最高の脇役・岸部一徳が体現する「2番手以下の生き方」
やっぱり、この男は面白い

会社の経営者として、部下を罵倒する役もあれば、独特のオネエ言葉で一匹狼の女医のストレスを癒す役もこなす。一つのイメージに凝り固まることをよしとしない、不思議な男の魅力に迫る。

温厚でミステリアス

ワイシャツに羽織姿。奇抜な格好なのに、なぜか違和感がない(『ドクターX~外科医・大門未知子~』HPより)

かねてから自作での起用を熱望しながら、まだ実現していない演出家の鴨下信一氏は、今や芸能界最高の名脇役となった岸部一徳(68歳)をこう評する。

「一徳さんは、昔の日本男児のいいところが出ている役者さんです。体が大きく、顔も怖い。そして不器用。でも見た目と違い、性格は温厚で真面目です。

小西真奈美が主演した映画『のんちゃんのり弁』の一杯飲み屋のおやじさん役のような、朴訥で、庶民的な役は、彼にしかできない」

こわもてなのに、主役との心の距離を巧みに縮める。最近の当たり役は、米倉涼子主演の『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)の神原晶役だ。番組スタッフが振り返る。

「一徳さんは、瞬時に台本に自分なりのアドリブを加え、主役を光らせ、相手の心を開かせることができる人です。

米倉さんは、そんな一徳さんの大ファンになりましたね。時間があくと、2人でよく話し込んでいました。一徳さんは見た目が怖く、寡黙なイメージですが、もともと京都の人なので、関西弁でダジャレが飛び出すほど、よくしゃべる。ソフトなしゃべり方が、安心感を与えているんです。

米倉さんが『笑いジワができるから、本番前は笑わせないで』と真顔でお願いするほど、打ち解けていました」

神原は、大門(米倉)らフリーランスの医者が所属する「神原名医紹介所」の所長。大門は若い頃、神原から外科手術のイロハを叩き込まれ、以来、精神的支えとも思っている存在だ。現実の世界に戻っても、米倉の気持ちは変わらなかった。最終回を迎える直前、米倉は、共演者・岸部についてこう明かしている。

「(2012年にドラマシリーズが開始した頃は)岸部さんはすごくミステリアスな方なので、私のことを認めていただけるかどうか、とても不安で……。でも、今ではすべてを吸い込んでくれる、大きな一徳さんにすごく甘えていて、他界した実の父以上に慕っているかもしれない、と思うほどなんです」