雑誌
ノーベル物理学賞・梶田隆章
「地の底でトロッコに乗った下積みの日々」

独占インタビュー60分
意外にも身長は183cmもある梶田教授。笑顔でニュートリノ振動について説明してくれた〔PHOTO〕gettyimages

「受賞するなんて思ってもいなかった」。そう遠慮がちに答えていたはずが、宇宙に関する話になると表情は一変。少年のように輝いた目で、30年以上にもおよぶ研究生活の日々を語った。

宇宙の成り立ちを知りたい

「ニュートリノは極小の素粒子の世界と極大の宇宙を結ぶ掛け橋」

東京大学柏キャンパスにある宇宙線研究所の入り口に貼られた大きなポスターには、こう書かれている。その言葉の主は、今年10月にノーベル物理学賞受賞が決まった、梶田隆章教授だ。

「ノーベル賞受賞の報告を受けたのは、東京大学の本郷キャンパスです。大学の式典に出席したあと、建物の一室でメールを打っている時に携帯電話が鳴りました。液晶には見覚えのない番号。電話口の相手は英語でしたが、あまりの驚きに、なんて言われたのか忘れてしまいました。

受賞の理由となった『ニュートリノ振動の発見』は私一人では成し遂げることはできなかった。そういう意味では、ただありがたいという気持ちでいっぱいです。受賞後、最初に電話した相手は恩師で、ノーベル賞の先輩でもある小柴昌俊先生(東大特別栄誉教授)です。受賞を伝えると、小柴先生は『おめでとう』と言ってくださいました」

梶田教授と小柴氏との出会いは'81年。梶田教授が埼玉大学理学部を卒業後、東大の大学院に入学し、小柴研究室に入った時だ。

「大学院の受験時には、どの先生がどんな研究をしているのか全然知らなくて、ただ素粒子の研究ができる研究室を探していました。素粒子に惹かれたのは、純粋な知的好奇心で、自然界の成り立ちを知りたいと思ったからです。

入試資料には、各研究室の簡単な紹介があったのですが、小柴研究室はたった1行、『電子・陽電子衝突実験を行う』とだけ書かれていました。

当時から、自分には理論分野は向いていないと思っていましたから、興味のあった素粒子に関係した実験ができる小柴研究室に惹かれた。小柴先生のもとで学ぶことになったのは偶然なのです。