読書人の雑誌『本』
リーダーは「上から目線」であれ!
~3.11の救援活動を統率した「指揮官の俯瞰力」

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富士山と月見草

(文・高嶋博視)

リーダーは我が儘でいい

およそ40年間にわたる制服生活(防衛大学校と海上自衛隊)を通じて思ったこと、考えたことを書いたものが、先ごろ講談社現代新書から出版されました。『指揮官の条件』といいます。

唐突ですが、「指揮官(リーダー)は我が儘でいい」と思っています。これは、海上戦闘員として生きてきた、私が出したひとつの結論です。

ここでいう我が儘は、聞き分けのない「わがまま」ではありません。「指揮官が我が儘でいい」という意味は、仕事において部下におもねるな、部下に遠慮するなということです。部下の話を真摯に聞く、部下の進言を受け入れる懐があることと、彼らにおもねることは全く違います。次元が違う話です。

具体的に、分かり易く言います。指揮官が信念をもって「ここぞ!」というときに、部下に対する過剰な配慮や、自分自身に迷いがあってはいけません。それでは部下が育たないどころか、組織を危険に曝すことになりかねません。厳しさは、優しさであり愛なのです。

組織の規模にもよりますが、リーダー(大小の組織を束ねる人)は、少なくとも1日に2回は担当の部署を見て回りたいものです。社長や管理職が現場に行くと、社員に出会います。そのとき、あなたはどのように振る舞うでしょうか?

ある人は、部下社員が「社長、おはようございます!」と挨拶しても、知らん顔です。別の社長は「おはよう」と応じます。他の方は「おはよう。調子はどうだ?」と、社員の目を見ながら聞きます。

有能な社長は、「おはよう。少し顔色がよくないな。何か困っていることがあるのか?」などと語りかけます。「家族はみんな元気か?」と問うこともあるでしょう。

この四つの例が要する時間の差は、わずか数秒でしかありません。多少話し込んでも、数分でしょう。しかし、上司と接した社員の心持ちには、天地の開きがあります。最後の例は、余計なお節介にも聞こえます。

問題は、上司が投げかける一言を、部下社員がどのように受け止めるかです。「余計なお世話だ」と受け止められたら、それはそのとおりなのです。あなたの人格、人間性がその程度のものだということです。部下が悪いわけではありません。

これが、表題の「月見草」の意味です。指揮官は、富士の裾野に咲く月見草の凜とした姿に感動し、月見草が持っている心の痛みや、心の襞を理解できなければいけません。あなたの懐の深さは、どの程度でしょうか?