【リレー読書日記・大林宣彦】伝えられなかった、私たちが「知るべき」戦争の姿
戦後70年、いまこそ「平和」への戒めを心に刻め
広島で行われた原爆投下戦後70年記念の灯篭流し〔PHOTO〕gettyimages

―ねがはくば/子等の行く末/幸くあれ/軍の狂気に/染まることなく。

山中恒さんから3冊の書物が送られてきた。そのそれぞれの扉にペン書きで、自作の句が添えられている。涙、溢れた。

―この国の/歴史のいつわり/悲しかり/解放名乗りし/暴虐の跡。
―戦時下の/苦き哀しみ/甦える/靖国神社を/思うたびごと。

2003~2005年にかけて出版されていた山中さんの著作が、此の度岩波現代文庫から『アジア・太平洋戦争史』上・下巻、もう一冊、小学館文庫から『「靖国神社」問答』として再版された。

敗戦後70年目の今年の夏が、「平和0年」のスタートではなく、「日本が再び戦争の出来る国」となろうという、まことに切羽詰まった今。ともかく日本の正しい歴史を学ぶことから始めようよと呼びかけてくるこの本は、この今にこそリアリティーを持つ必読の書だ。

山中さんの自宅の書庫は、日本の戦争史の宝庫である。氏はその厖大な資料を一頁一頁丁寧に繙いて、忘れられ伝えられることの無かったこの国の戦争の実体を、国際法など世界の流れと照し合わせつつ再構築していく。

日清・日露戦争から第一次世界大戦、満州事変からノモンハン。真珠湾奇襲攻撃からポツダム宣言、太平洋戦争での日本の降伏に至る経緯が、信長、秀吉、家康に至る戦国絵巻の如くによく目に見え、理解、納得できる。

靖国神社という内外で争いの元となる装置の正体も鮮明で、戦争と財閥、軍需景気と我らが経済との関係には注意せよ。憲法9条の奇蹟も戒めも、芯から心に宿る。「平和創り」とは、ここからこそ出発すべきであるだろう。

真珠湾での長岡花火打ち上げに続いて、ホノルルからマーシャル諸島、ロサンゼルスと、映画の上映とティーチインの旅に出ていた。ホノルルには戦争体験のある邦人が多いのだということで、映画はより深いところで受け止められ、マーシャル諸島では長岡花火の映画がビキニ環礁の水爆実験に触れていることもあって、ロヤック大統領に迎えられ、此の度ようやく設立された日本大使館の最初の事業として、大統領閣下と光岡大使に挟まれて、自作を鑑賞した。

広島に投下された原子爆弾の、トータル1000倍もの放射能を撒き散らしたビキニの水爆実験にド胆を抜かれたように、大和撫子がヘソ丸出しの下着みたいな水着など、ド胆を抜かれたぞ、というのがビキニ水着の名の由来だが、「その噺が面白いので、アメリカでもそうなりました」と語ってくれた大使館員さんは、僕が昔作った山中恒・原作の映画『さびしんぼう』が大好きだとおっしゃる。