空白を埋めるように情報を集める必要はあるのか?近未来を舞台に考える長編
インタビュー『消滅』恩田陸
著者の恩田陸さん

―202×年9月30日。日本の国際空港で突如鳴り響いたサイレン。原因不明の電波遮断。超大型台風の接近による空港封鎖。異変にざわめく中、入国審査で止められた11人の男女が、別室に連行される。「この中にテロリストがいる」と通告された彼らの密室劇を描いた本作は、犯人探しのミステリでありつつ、パニックアクションやSFの要素もはらんでいます。

ちょっとネタを詰め込みすぎたかもしれません(笑)。伏線もたくさん張ってしまったので、回収するのが大変でした。

そもそも、生まれも育ちも職業も違う人たちが否応なしに一ヵ所に居合わせる場所はどこか、と考えたときに空港が舞台として浮かんだんです。実際に空港を取材して驚いたのは、国際空港は基本的に「どの国でもない」ということ。作中にも書きましたが、入国審査を抜けるまでは誰もその人に関与できないんです。

しかもそれは国際法で規定されているわけじゃなく、あくまで慣例上のこと。政治的にもかなり重要な場所なのに、そんな概念上の判断で済ませていいのかと驚きました。

―タイトルの「消滅」は、テロリストが何かを消滅させようとしているらしい、という謎を示したものですが、ある意味では空港もひとつの消滅点といえますね。

そうかもしれません。乗り継ぎや時差によって時間も簡単に消えてしまいますし、空港というのは不思議な空間だとつくづく思います。

以前、テレビのドキュメンタリーで観たのですが、在日外国人の方が、国籍の欄が「無国籍」となっている日本のパスポートを持っていたんです。本人が選択したらしいのですが、そんなことができるのかと度肝を抜かれました。

また、日本では二重国籍が禁じられているものの、実際に選択を勧告した前例はないそうです。たまたま事件になっていないから指摘されていないだけで、現実には二重国籍のまま日本のパスポートを持っている人がたくさんいる。国籍の境界線とは何なのだろうと考えてしまいます。