ヤクルトスワローズにはなぜアンチがいないのか? ~みんなに愛される不思議なチームの謎に迫る
ヤクルトスワローズ公式HPより

巨人が勝ったら腹が立つけど、ヤクルトなら許せる。阪神や広島ほど熱狂的でないから誰でも応援しやすい。神宮の杜に囲まれた球場を持ち、選手もファンも幸せなチームはいかにして生まれたのか――。

カネはないけど品がある

「ファンのみなさん、おめでとうございます!」

'01年にヤクルトが優勝した時、当時の若松勉監督が、インタビューで発したのがこの言葉だった。興奮のあまり、「ありがとう」と言いたかったのを、「おめでとう」と言い間違えてしまい、そのまま定着した「名言」だ。

今年、14年ぶりにリーグ優勝を決めた真中満監督は、当然のようにこの言葉をファンに届けた。若松氏が言う。

「優勝する何日か前に、真中監督から『あのフレーズを使わせてもらいます』と話があったので、快諾しました。やっぱりファンの人に『ありがとう』って言うより、『おめでとう』のほうがこのチームにはしっくりきますね(笑)」

ヤクルトスワローズというのは、不思議な球団だ。なぜか、「ヤクルトが嫌い」「ヤクルトには負けたくない」というアンチがいないのだ。

そこは人気球団である巨人、阪神、ソフトバンクなどと大きく異なるところ。一体、ヤクルトの独特のチームカラーは、どのように醸成されているのだろうか。

「選手は球団にとって子供と同じ。だから最後まで面倒を見る」。これはヤクルトの初代オーナー松園尚巳の言葉だ。

元ヤクルトの矢野和哉氏が当時を振り返る。

「今でこそ、どのチームも移動の際のスーツを揃えていますが、あれは元々ヤクルトが始めたんです。年俸が高い選手はいいスーツを着て、低い選手はヨレヨレでは一体感が出ないと、会社がスーツを支給してくれた。そんな松園オーナーの後ろ盾があって、球団が成り立っていた。それが、ヤクルトが『ファミリー』と言われる原点です」