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「エディ・ジョーンズ」という激情
~敵も味方も恐れたラグビー日本代表監督を振り返る

文 / 藤島 大
日本代表が発展途上のときはピッチレベルで選手を鼓舞。4年間で日本ラグビーの歴史を変えてみせた 〔PHOTO〕gettyimages

成果と言動に世界が注目

あの南海の怪力集団、サモアが静かなままだった。26対5。ジャパンの快勝だ。

つくづくラグビーとは自信のスポーツである。開幕前には大会のダークホースともくされた暴れん坊が「巨人国、南アフリカ代表スプリングボクスを倒したジャパン」をリスペクトした。

身上であるボール獲得局面における問答無用の体当たり、ぶちかましを自制する。どうやら「反則を取られたら負けてしまう」と考えたらしい。結果、迫力を欠き、別の状況でペナルティーを繰り返した。荒馬がタキシードを着たようなものだった。

日本代表のエディ・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は、もはや国際ラグビー界で注目の指導者と遇される。周到な準備、一切の妥協を排する実践で地力を培った。勝負にかける直感と科学の融合は、大舞台に驚愕の結果をもたらした。

「イングランドの次期監督へ意欲を表明」(シドニー・モーニング・ヘラルド紙。10月6日付)なんて記事も盛んである。

ただし、この人、黙っていても敬意を得られそうなのに、ちっとも静かではない。

南アフリカ戦の2日後、さっそく、「なぜ大会後に日本を離れるのか」について現地のメディアに口を開いた。

「かの地でラグビーを運営する人々には熱意が欠けている。大きなフラストレーションを感じていた」(インディペンデント紙)。

南半球のスーパーラグビーに来年2月から加わる日本の「サンウルブス」をめぐる疑いも隠さない。

「日本の参加が認められたことに驚いている。きっと法律上の問題があるのだろう」「もし失敗すれば、この競技(ラグビー)に深刻なダメージを与える」(ニュージーランド・ヘラルド紙。9月29日付)。

まあ直截、ストレートである。

そして、そんな激情の気性、軋轢をおそれぬ辛辣な言動は、穏便な人間関係の敵であっても、いざ勝負の最前線では強い。それこそ敵に回すとこわいのである。