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【感動秘話】
ノーベル物理学賞に残された「もう一枠」
~梶田隆章さんが師と仰ぐ戸塚洋二氏の功績とは

ノーベル物理学賞の発表の様子 〔PHOTO〕gettyimages

世界中の物理学者が思い浮かべた名前

ノーベル賞は、通常3人まで同時授賞されることで知られている。

だが10月6日、梶田隆章・東大宇宙線研究所長(56歳)のノーベル物理学賞受賞が発表された時、読み上げられた名前は2人だった。その瞬間、世界中の物理学者が「残る一枠」の名前を思い浮かべた。

ヨウジ・トツカ。

2008年に大腸ガンで逝去した戸塚洋二氏(享年66)のことである。岐阜県神岡町の山中にカミオカンデを作り、世界で初めてニュートリノを観測した小柴昌俊さん('02年ノーベル賞)の愛弟子として、後継施設スーパーカミオカンデ建設を主導した人物だ。

梶田さんは受賞会見で戸塚氏のことを「色々なことを教えていただいた先生のような存在です」と語り、「氏が生きていたら共同受賞をしていたと思うか」との問いに、

「はい、そう思います」

と即答している。

「戸塚氏と梶田さんは小柴研の先輩後輩で、いわば戸塚氏が兄弟子、梶田さんが弟弟子という関係でした。

カミオカンデの観測から『ニュートリノ振動』の可能性に気づいた梶田さんと、それを実証するスーパーカミオカンデを作った戸塚氏。二人を中心に100人を超えるスタッフが力を合わせて成し遂げた、世紀の大発見です。

'98年に国際学会でニュートリノ振動を発表するや、戸塚氏のもとに世界中の研究者から『おめでとう。ノーベル賞受賞だな』という言葉が届いたといいます。この業績にノーベル賞がもたらされるのは時間の問題でした」(科学ジャーナリスト・緑慎也氏)