どん底の女がのぞいた他人の日常とは?
女性3人の独白で描く傑作サイコミステリー

『ガール・オン・ザ・トレイン』著者、ポーラ・ホーキンズに聞く
Photo (c)Kate Neil Copy right (c)2015 by PAULA HAWKINS

2015年ニューヨークタイムズ ベストセラー1位。
世界45ヵ国で発売が決定した、今年最大の話題作!

2015年、世界の出版界で話題の中心にあった作品が、ポーラ・ホーキンズによる『ガール・オン・ザ・トレイン』だ。そのシンデレラストーリーに迫る。

ホーキンズからのメッセージ

誰だって、人の秘密をのぞいてみたいという気持ちがありますよね。世界のどこに行っても、電車の通勤客は似たようなもの。毎朝、毎晩、電車に乗って、新聞を読んだり音楽をきいたりします。

窓の外に目をやると、いつも同じ町、同じ家がみえます。そんな景色のなかに、赤の他人の生活をかいまみることができます。そんなとき、私たちは首を伸ばして、それをもっとよくみてやろうとするものです。

私はハラーレ(ジンバブエの首都)の郊外で育ちました。ハラーレの人々はみんな、車で通勤します。私を含め、裕福な白人は、塀や門や庭のある家に住んでいるので、生活ぶりを人にみられることはありません。だから、17歳のときにロンドンに移って、大都市ではこうやって他人の生活を間近で見ながら通勤するんだと知ったときは、とても驚いたし、おもしろいと思いました。

他人の生活をのぞきみるなんていけないと思いつつ、ついついみてしまうものです。ちらっとみえたと思ったら、もうみえなくなる、それでもいろんなことがわかってしまう。

自分の降りる駅の手前の駅前にあるマンションの最上階に住む人となんて、会ったことがないでしょうし、どんな人かも知らないでしょう?

なのに、その家の息子がロナウドの大ファンだということや、ティーンエイジャーの娘がワン・ダイレクションよりアークティック・モンキーズのほうが好きだということがわかってしまうんです。北欧の家具や、表現主義のアートが好きだということも。

そしてこう思うようになるのです。私はあの人たちを知っている。あの人たちが好き。あの人たちも私のことが好きになってくれるはず。友だちになれるかもしれない。

都会の生活に、孤独感や周囲からの孤立はつきものです。日々の通勤が生活の一部であるのと同じこと。本書の主人公レイチェルも、まさにそんな生活を送っていました。

彼女は突然「転落」しました。自分でもわけがわからないうちに、幸福から絶望につきおとされました。

充実していた生活に、ぽっかり穴があいてしまいました。それをどうやって埋めたらいいのか、わからず苦しんでいたレイチェルは、毎日通勤電車からみえる家の夫婦に心理的なつながりを求めていきます。

赤の他人であるはずの夫婦のことを毎日みているうちに、彼らと知り合いであるかのような気がしてきます。夫婦の気持ちが理解できるような錯覚までおこします。夫婦の物語を勝手につくりあげ、頭のなかで夫婦と仲良くなります。でも実際は、夫婦がどんな生活を送っているかなんて、なにも知りません。

そんなある日、レイチェルは思いがけない光景を目撃します。とてもショッキングな光景でした。そして彼女は、自分が大変な事件に巻き込まれようとしていることも知らず、越えてはいけない一線を越えてしまいます。夫婦の暮らしをのぞきみするだけでなく、そこに自ら踏み込み、かかわっていったのです。

その一線を越えたら、もう後戻りはできませんでした。

続きは、『ガール・オン・ザ・トレイン』の乗客になってから―─。

▼あらすじ

夫と離婚し、酒浸りの日々を送るレイチェル。彼女は通勤電車の窓から、一組の幸せそうな夫婦を見つけ、かつての自分の姿と重ね合わせていた。しかしある朝、理想としていた妻の信じ難い光景を目撃。その直後から、妻は行方不明となってしまう……。信用ならざる、女性3人の独白で描く、傑作サイコ・スリラー。

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