雑誌 企業・経営
「美しいものに永遠であってほしいと願う。だからカメラがあるのです」
リコーイメージング 赤羽昇社長かく語りき

「ペンタックス」「リコー」の両ブランドを受け継ぎ、カメラ、レンズ、双眼鏡などを製造、販売するリコーイメージング。中判カメラ「ペンタックス645」シリーズや、リコー「GR」シリーズなどの名機を世に出す。社長は長銀(日本長期信用銀行)出身で、世界各国を放浪してきた赤羽昇氏(57歳)だ。

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あかはね・のぼる/'58年東京都生まれ。'82年に東京大学法学部を卒業し、日本長期信用銀行(現新生銀行)へ入社。'05年にアサヒプリテックへ入社し、東京海上アセットマネジメント投信を経てリコーへ入社。'12年、ペンタックスリコーイメージング(現リコーイメージング)社長へ就任、以来現職

希求

人は永遠を求め、写真を撮影するのだと思います。花も人間も、限りある存在です。夏の黄昏と冬の夕焼けでは、空気がまったく異なるなど、景色も移ろいます。

しかし・・・・・・それでもなお、人間は美しいものや愛するものに永遠であってほしいと願うのでしょう。カメラは、そんな切なる思いから生まれ、今も幾多のユーザーに、この瞬間の光と空気を、どう凝縮させるかを問いかけているのだと思います。

全天球

最近は売れ筋が二極化しています。スマートフォンのカメラが普及し、(コンパクトデジカメでなく)超高画質機と、斬新な機能を持った製品が売れているのです。弊社の「ペンタックス645Z」は、雪景色を撮影して拡大すると結晶が見えるかと思うほど鮮明です。

また「RICOH THETA S」は、アウトドアで家族と食事をしている時にシャッターを切れば、自分と家族と食事と空まで含む360度全天球が撮影できます。ちなみに弊社は「こんな場面で使って下さい」と提案してはいません。使い方の幅を狭めてしまいかねないからです。使い方は、使う側の無限のイマジネーションにゆだねています。このような新機能や、性能の向上が、新しい写真の文化を生むといいですね。

砂漠 19歳の時、アメリカ横断に挑戦。この写真撮影のあと、砂漠の真ん中で車にトラブルが発生し、遺言を残した

現場の声

長銀時代、バブル崩壊後の不良債権回収、企業再生の仕事はシビアでした。例えば、海外リゾートホテルの再生のため現地に赴くと、経営状況の悪さは一目瞭然なのに、ホテルの周囲に経営幹部の立派な住宅が並んでいた。

笑顔で寄ってくる幹部は全員、自分に有利な情報を私に伝えたい人物でした。ただ、現場の従業員には真実が見えているはず。幹部に不正があれば反感もあるに違いない。私は現地のスタッフと一緒に草むしりをしながら、少しずつ、何が起きているのか把握しました。

ほかの施設では、酋長の家に招かれ、慣れない味の酒を勧められむせながら飲むと、「これで儀式は終わりだから契約してやる」と言われたり・・・・・・(苦笑)。

火の中へ

企業再生を担当し、何件も訴訟を抱え、リスク管理が習い性になりました。嫌なヤツだと思わないでほしいのですが(笑)、私は訴訟が起こる場面で、人の言葉は絶対に信用しません。普段「おまえとは火の中、水の中」と言ってくれていた人も、いざ「一緒に被告になってくれるか?」と言うと、そうはしてくれない。むしろ普段「ここまでしかしないよ」と言う人物のほうが、一見冷たいように見えても、信用がおけることもあります。

それから、私は本当のことしか言いません。世の中の人は驚くほど、その場限りのことを言います。しかし訴訟の場面ではすぐ「前の証言と違いますね、偽証です」となってしまうのです。ただし「全部言う」ではない。あくまで「本当のことを言う」です。これが最大のリスク管理です。